「国外財産調書」の提出義務について

平成24年度の税制改正で「国外財産調書」についての規定が新設されています。

 

非永住者以外の居住者(永住者)は、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合には「国外財産調書」を、その年の翌年3月15日までに所轄税務署長に提出しなければなりません。

国外にある財産については課税当局も把握が難しかったのですが、課税漏れを防ぐため、特に富裕層の課税漏れを防ぐために「国外財産調書」の規定が創設されたました。

 

確定申告を提出しない場合も「国外財産調書」を提出しなければならないのか?

 

確定申告を行わない方でも、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合には、「国外財産調書」を提出しなければなりません。

したがって、確定申告書の提出の有無は関係ないということになります。

 

「財産及び債務の明細書」に国外財産も記載して提出している場合も「国外財産調書」の提出は必要か?

 

その年の所得が2,000万円以上ある方については「財産及び債務の明細書」を提出しなければなりません。これに、国外財産も記載していた場合についても「国外財産調書」の提出が必要なのかどうかですが、「国外財産調書」の提出も必要になってきます。

ちなみに「財産及び債務の明細書」には国外財産の記載は要しないとされています。

したがって、所得が2,000万円以上あり、かつ国外財産を5,000万円超有する方は、「財産及び債務の明細書」と「国外財産調書」の二つを提出しなければなりません。

 

海外で借入金もある場合で、正味財産では5,000万円超の要件に当てはまらない場合についても「国外財産調書」の提出が必要か?

 

5,000万円超の要件は、あくまでも国外財産そのものの価額を判断基準としているため、正味財産で判断はしません。ですので、正味財産では5,000万円超の要件を満たさない場合についても、国外財産の価額の合計額が5,000万円を超える場合については、提出義務が生じます。

 

罰則規定について

 

この規定は、国外財産調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その国外財産に関する所得税等の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます。)が生じたときは、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%加重されます。

逆に、国外財産調書を提出期限内に提出した場合には、国外財産調書に記載がある国外財産に関する所得税等又は相続税の申告漏れが生じたときであっても、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%軽減されます。

また、国外財産調書に偽りの記載をして提出した場合又は国外財産調書を正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることがあります。ただし、期限後でも提出をすれば、情状により、その刑を免除することができることとされています。

 

※国外財産調書を提出する際には、「国外財産調書合計表」を作成し、添付する必要があります。

 

このように「国外財産調書」の規定は、罰則規定もある規定です。創設されてから数年たつ規定ですが、その年の12月31日の現況で判断しますので、年末に向けて国外財産を有する方は、今一度確認をするようにしてください。

役員が分掌変更した場合の退職金の取扱い

法人の役員が代表取締役や取締役を一度退職して退職金を支払い、退職後も会長職や監査役・相談役として在職する場合(分掌変更)があります。このような場合について、実質的には退職していないということで税務署から否認されるケースがあります。

 

法人税基本通達9-2-32では、役員の分掌変更等の場合の退職給与について、下記の通り規定しています。

 

法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。

(1) 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。

(2) 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。

(3) 分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

(注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。

(下線筆者)

 

分掌変更により代表取締役から取締役相談役となり、その際に支給した役員退職金(約5,600万円)の損金算入が認められるか否かについて問題となった判決(東京地裁平成29年1月12日判決・東京高裁平成29年7月12日判決)があります。

具体的には、役員としての地位又は職務の内容が激減して、実質的に退職したと同様の事情にあると認められるか否かが問題となりました。

この裁判例では、分掌変更後の役員給与が3分の1まで引き下げられており、原告の法人は前代表者は実質的に退職したと同様の事情があると主張しました。しかしながら、原告法人の経営に支障が生じないように前代表者が引き続き当分の間は原告法人の経営に関与して、現代表者に対して指導や助言を行うことによって、専ら営業部門で勤務してきた現代表者の経営責任者としての経営全般に関する知識や経験の不足を補うことが予定されていたと認定しました。

さらに、前代表者が原告法人の幹部が集まる代表者会議に出席して、経営上の重要な情報に接するとともに個別案件の経営判断にも影響を及ぼし得る地位にあったこと、原告法人の資金繰りに関する窓口役を務めており主要な銀行から実権を有する役員と認定されていたこと、営業活動で不在にすることが多い現代表者に代わって来客対応を行っていたことなどを踏まえ、対外的な関係においても経営上主要な地位を占めていたと認定しました。

 

この裁判例は、法人税基本通達9-2-32(3)の給与がおおむね50%以上減少するという規定には当てはまっていたわけですが、あくまでも経営上主要な地位を占めていると認められる者は除かれているので、形式的にではなく実質的に判断がなされているということになります。

 

また、対内的にだけでなく、対外的に経営上主要な地位を占めているかどうかについても判断材料となっているので、分掌変更により退職金を支給する場合には注意が必要になります。

非居住者等から不動産を購入する場合の注意点

非居住者や外国法人(以下、「非居住者等」といいます。)から日本国内にある土地等の不動産を購入する場合、その売買代金から10.21%の税率で計算した所得税及び復興特別所得税を差し引いて、税務署に納付しなければいけません。

「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。

つまり、日本人だけれど海外での居住が1年以上の場合外国人で海外に居住 又は 日本での居住が1年未満の場合外国法人で日本に登記がない法人が「非居住者」に該当してきます。

逆に、日本人で日本に居住している人はもちろん居住者ですが、日本人で海外に居住している人でもそれが1年未満であれば「居住者」となります。また、外国人も日本での居住が1年以上の場合は「居住者」となります。そして、外国法人でも日本に登記がある法人は「居住者」となります。

ですので、売主が日本人であるからといって、「居住者」とは限らないので注意が必要です。

また、源泉徴収をする義務は「土地等の譲渡対価の支払をする者」のすべてが含まれているため、一般のサラリーマンなども非居住者等に対して土地等の不動産の売買代金を支払う場合には、原則として10.21%の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければいけないことになります。

なお、個人の方が自己又はその親族の居住の用に供するために、非居住者等から土地等の不動産を購入した場合であって、その土地等の不動産の売買代金が1億円以下である場合には、その個人の方は、支払の際に源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

 

買主は、この土地等の不動産の売主が「居住者」なのか、それとも「非居住者」なのか判断できないような場合が生じてくる可能性があります。

このような場合についての裁判で、東京地裁平成28年5月19日判決(平26(行ウ)114・棄却・控訴・Z888-2035)についてみていきたいと思います。

 

Ⅰ 事案の概要

原告A社が、甲との不動産売買契約に基づいて売買代金7億6215万円余を甲に支払ったところ、課税庁は売主である甲は「非居住者」であるからA社は源泉徴収義務を負うとし、納税告知処分を受けたという事例です。

 

Ⅱ 争点

①甲の非居住者該当性

②A社は売買代金について、所得税法212条1項の源泉徴収義務を負っていたのか否か

 

Ⅲ 判旨

 

1 売主甲の非居住者該当性について

甲は、米国において、米国籍及び社会保障番号を取得しており(日本国内には米国発給の旅券を用いて入国)、平成10年以降、多くて年4回日本に入国しているものの、その滞在期間は、1年の半分にも満たない。そして、甲が、平成12年11月に米国住居を購入し、平成13年以降は米国住居において長男と同居して生活していたことに鑑みれば、本件支払日(平成20年3月)において、甲の生活の本拠は、米国住居にあったというべきである。

甲は、支払日において、日本国内に住所を有しておらず、支払日まで引き続いて1年以上日本国内に居所を有していなかったのであるから、甲は、所得税法上の「非居住者」であったというべきである。

 

2 原告A社の源泉徴収義務について

A社が、売買代金を支払う際、甲が「非居住者」であるか否かを確認すべき義務を負っていたこと自体については当事者間に争いがない。

A社の担当者は、甲の住所として、米国住所を送金依頼書に記入していたこと、経理担当者から非居住者か否かの確認を支持されていたこと等の事実関係の下において、甲の住民票等の公的な書類を確認していたとしても、そのことのみを持って、A社が本件注意義務を尽くしたということはできないから、本件条項に基づく源泉徴収義務を否定すべき理由はない。

よって、A社は 、売買代金を支払う際に、源泉徴収義務を負っていたと判断されました。

 

裁判でも、厳しい判断をされているので、不動産を購入する際はお気を付け下さい。

民法改正による債権消滅時効の見直し

2017年5月26日、民法の大改正が行われました。1896年の民法制定・公布以来、約120年ぶりの大改正となっています。インターネット取引の普及など時代の変化に対応し、さらに消費者保護も重視した改正内容となっています。

ここでは、この大改正となった民法の債権関係の改正について触れていきます。

消滅時効の統一

まず、「消滅時効」とは、債権などの財産権について、権利不行使という状態が一定期間継続した場合に、その権利を消滅させる制度のことをいいます。現行の民法では、一般的債権の消滅時効は原則10年と定められており、例外として業種ごとに異なる短期消滅時効を定めています。この例外を設けているのは、金額の低い債権や日常頻繁に生じる債権については短期間で証明が困難になりやすいことが理由とされています。現行の民法のおける債権の消滅時効は下記の表の通りです。

    業種別の主な債権の種類  時効期間
・運送賃に係る債権

・旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席 料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権

  1年
・弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権

・生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権

・自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権

・学芸又は技能の教育を行うものが生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

  2年
・医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権

・工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権

  3年
・年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権(会社間の商取引)   5年

 

上記のように、現行の民法では業種ごとに短期消滅時効が定められていますが、この業種ごとの短期消滅時効を廃止し、原則一本化され、次のいずれかに該当するときは債権は時効によって消滅することとなりました。

  1. 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しない時は時効消滅

  2. 債権者が知らなくても権利を行使することができる時から10年間行使しない時は時効消滅(現行法と同様)

 

事業のための貸金債務についての個人保証の制限

企業向けの融資について、個人保証についての意思確認を厳格にすることで、保証人保護を拡充することために、改正法案では、個人保証について一定の制限が規定されました。連帯保証の場合も同様となります。

具体的には、経営者以外の第三者である個人が、事業のための借入の保証人となる場合には、その保証契約締結の日前1か月以内に作成された公正証書で、保証する意思が確認されなければ、原則として無効となります。

ただし、保証人となる者が個人であっても、法人の取締役、執行役、団体理事又はこれらに準ずる者、過半数の議決権を持つ株主、個人事業の共同事業者など、主債務者と一定の関係にある者は、保証制限の対象の例外となっています。

 

法定利率の引き下げ

金銭債権に利息が付される場合、その利率は当事者間の合意によって定めた利率(約定利率)によることが一般的ですが、当事者間に定めがない場合、法律で定められた利率(法定利率)が適用されることになります。

低金利が長期間続いており、実勢金利に比べて現行法定利率である年5%(商事法定利率は年6%)は高すぎるとの指摘されていました。

そこで改正民法では、現行の法定利率5%を3%に引き下げ、その後3年ごとに見直す変動性が導入されることになりました。

 

※改正法の施行日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

留学生をアルバイトとして雇用した場合

飲食店などでは、留学生をアルバイトとして雇用することもあると思いますが、そのような留学生に支払う給料の源泉徴収はどうしたらよいでしょうか?

 

このような場合は、まず在留資格・在学証明により居住者なのか非居住者なのかを確認する必要があります。

 

  • 居住者の場合⇨「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて通常の場合と同様の源泉徴収

  • 非居住者の場合⇨一律20.42%の源泉徴収

 

また、留学生の母国との間で締結されている租税条約によって、源泉徴収が免除される場合もあるので、租税条約の締結の有無を確認する必要があります。

 

◆居住者と非居住者の判定の仕方

予定滞在期間が1年以上の場合

  • 実際の滞在期間1年以上・・・居住者
  • 実際の滞在期間1年未満・・・帰国時まで居住者

 

予定滞在期間が1年未満の場合

  • 実際の滞在期間1年未満・・・非居住者
  • 実際の滞在期間1年以上・・・1年以上滞在が明らかとなる時まで非居住者、以後は居住者

◆租税条約の有無の確認

日本との間で租税条約が締結されている国の留学生の場合は、租税条約が優先されます。

(1) 中国から来日した留学生
専ら教育を受けるために日本国内に滞在する学生で、現に中国の居住者である者又はその滞在の直前に中国の居住者であった者が、その生計、教育のために受け取る給付又は所得は、免税とされます(日中租税協定第21条)。
したがって、中国から来日した大学生の日本での生活費や学費に充てる程度のアルバイト代であれば、免税とされます。

この場合について、源泉徴収の段階で免税措置を受けるためには、「租税条約に関する届出書」を作成し、学校の発行する在学証明書等を添付して給与支払者を通じて、その給与支払者の所轄税務署長に提出する必要があります(租税条約等実施特例省令第8条)。なお、税務署への提出期限は、入国の日以後最初の給与を支払う前日までとなります。

(2) インドから来日した留学生
専ら教育を受けるために日本国内に滞在する学生で、現にインドの居住者である者又はその滞在の直前にインドの居住者であった者が、その生計、教育のために受け取る給付は、免税とされます。ただし、日本の国外から支払われるものに限られます(日印租税条約第20条)。
したがって、インドから来た大学生が受け取る日本でのアルバイトによる所得は、国外から支払われるものではありませんので、免税とされません。この場合、その給与等については、その大学生が居住者か非居住者かの判定を行った上、それぞれの区分に応じた源泉徴収を行うこととなります。

※ベトナムから来日した留学生もインドから来日した留学生と同様の租税条約が締結されています(日越租税協定第20条)。

※「専ら教育を受けるために日本国内に滞在する学生」とは、学校教育法第1条に規定する学校(高等学校・大学・大学院等)に通う学生でなければならないため、日本語学校・専門学校などに通う学生の場合は租税条約の適用を受けないので注意が必要です。

 

日本が締結した租税条約の学生条項は、免税とされる給付の範囲等が国によって様々なので、租税条約の適用に当たっては、各国との租税条約の内容を確認するようにしてください。

印紙税の取扱いと注意点

印紙税は、商売をされている方にとっては身近な税金だと思います。作成した契約書や領収書などの課税文書に所定の金額の印紙を貼りつけ、印紙と文書にかけて印章または署名で消印することによって納付します。この消印は、印紙の再使用を防止するためのものなので、例えば複数の人が共同で作成した契約書であっても、作成者のうち誰か1名が消印を行えば問題ありません。

国税庁は「契約書や領収書と印紙税(平成29年5月)」をホームページに掲載していますので、印紙税の金額等について参考になさってください。

印紙税は文書に課税されるものですが、課税されるかどうかの判断は、当該文書の名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、実態で判断することになります。例えば「売買契約書」というタイトルになっていても、中身が請負の内容であれば「請負に関する契約」(第2号文書)として扱われます。


印紙税の節税について考えてみたいと思います。

Ⅰ 消費税抜きで表記する

例えば、商品の代金をいただいて領収書を発行する場合、5万円以上となる場合は印紙を貼らなければいけません。

消費税の課税事業者が、消費税の課税対象取引に当たって契約書や領収書などの課税文書を作成する場合に、①消費税の金額を区分して記載しているとき、②税込価格および税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税の金額が明らかとなる場合には、その消費税の金額は印紙税の記載金額に含めないこととされています。なお、この取扱いの適用がある課税文書は、次の3つに限られています。

  1. 第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)
  2. 第2号文書(請負に関する契約書)
  3. 第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)

具体的な例をあげて説明すると次のようになります。

(1)広告の請負契約書で税込1,080万円の場合

「請負金額1,080万円うち消費税額等80万円」と記載したとします。この場合、消費税額等80万円は記載金額に含めず、記載金額1,000万円の第2号文書となり、印紙税額は1万円となります。

また、「請負金額1,080万円 税抜価格1,000万円」と税込価格及び税抜価格の両方を具体的に記載している場合についても、消費税額等が容易に計算できることから、記載金額は1,000万円の第2号文書となります。

しかし、消費税額等について「うち消費税額等80万円」ではなく、「消費税額等8%を含む。」や「請負金額1,080万円(税込)」と記載した場合には、消費税額等が必ずしも明らかであるとはいえないので、記載金額は1,080万円と取り扱われてしまい、第2号文書の場合、印紙税額は2万円となります。

(2)金銭の領収書で税込51,840円の場合

「商品販売代金48,000円、消費税額等3,840円、合計51,840円」と記載したとします。この場合、消費税額等の3,840円は記載金額に含めないので、記載金額48,000円の第17号の1文書となります。したがって、記載金額が5万円未満(平成26年3月31日以前に作成されたものについては、3万円未満)の領収書は非課税文書となりますので、印紙税は課税されません。

上記はあくまでも消費税の課税事業者の場合の取扱いになるので、消費税の免税事業者については、消費税の具体的な金額を区分記載したとしても、これに相当する金額は記載金額に含めることになるのでご注意ください。

 

Ⅱ コピーを利用する

契約当事者のどちらか一方のみが契約書の原本を持ち、もう一方はコピーを持つ場合には、そのコピーについては印紙の貼りつけは不要となります。

ただし、次のような形態のものは印紙税の課税対象となります。

1.契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの。

2.正本などと相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの、つまり原本証明をしているもの。

なお、所持する文書に自分だけの印鑑を押したものは、契約の相手方当事者に対して証明の用をなさないものとなるので、課税対象とはなりません。
また、契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名若しくは押印又は証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。また、ファックスや電子メール等により送信する場合も正本等は送付元に保存され、送付先に交付されておらず、送付先で出力された文書は写しと同様であり、課税対象とはなりません。

 

Ⅲ 外国で契約書が作成される場合

印紙税法は日本の国内法なので、その適用地域は日本国内に限られます。

したがって、課税文書の作成が国外で行われる場合には、たとえその文書に基づく権利の行使が国内で行われるとしても、また、その文書の保存が国内で行われるとしても、印紙税は課税されません。つまり、いつ、どこで作成されたものであるかを判断して、課税となるかどうかが決まることになります。

印紙税法の課税文書の作成とは、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいいます。

そのため、相手方に交付する目的で作成する課税文書(例えば、株券、手形、受取書など)は、その交付の時になり、契約書のように当事者の意思の合致を証明する目的で作成する課税文書は、その意思の合致を証明する時になります。

例えば、アメリカの会社A社と日本の会社B社が不動産の売買契約をした場合で、B社が契約書を2通作成し署名押印して相手方B社に郵送し、A社はこれに署名して1通をB社に返送した場合、その契約当事者の残りのA社が署名等するときに課税文書が作成されたことになり、その作成場所は国外なので、当該契約書には印紙税法の適用はないことになります。

ところで、返送された1通の契約書はB社において保存されることになるので、いつ、どこで作成されたものであるかを明らかにしておかなければ、印紙税の納付されていない契約書について後日トラブルが発生することが予想されます。したがって、契約書上に作成場所を記載するとか、契約書上作成場所が記載されていなければその事実を付記しておく等の措置が必要になります。

また、文書の作成方法が逆の場合、つまり、アメリカのA社で課税文書の調製行為を行い、A社が署名等をした上でB社に送付され、B社が意思の合致を証明する場合には、B社が保存するものだけではなく、A社に返送する契約書にも印紙税が課税されることになります。

 


では、本来印紙税を貼らなければならない契約書や領収書などの課税文書に印紙を貼らなかった場合どうなるのでしょうか?

印紙税を納付することとなる課税文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、すなわち当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されることになります。

具体的に計算してみると、例えば2万円の印紙を貼らなければならない契約書に印紙を貼っていなかった場合、2万円+2万円×2=6万円の過怠税が課されます。過怠税となった6万円は全額が法人税の損金や所得税の必要経費に算入されない(経費にできないイメージ)ので注意が必要です。

ただし、税務調査を受ける前に、自主的に不納付を申し出たときは1.1倍に軽減されます。

また、貼りつけた印紙を所定の方法によって消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。

法人税等の税務調査が行われる際は、付随的に印紙税についても確認されることがあるのでご注意ください。

 


次に、あまりないケースかもしれませんが、国等と締結した請負契約書の印紙税の取扱いについてみていきます。

国等(国、地方公共団体、法別表第2に掲げる者)が作成した課税文書については、法第5条により印紙税は非課税になります。

また、国等と国等以外の者が共同作成した課税文書については、国等が保存するものは国等以外の者が作成したものとみなし、国等以外の者が保存するものは国等が作成したものとみなします(法第4条第5項)。

つまり、国等以外の者が所持する請負契約書は非課税文書(印紙税が貼られていない請負契約書)となり、国等の所持するものは納税義務者となる第2文書(請負に関する契約書)として課税の対象(印紙税が貼られている請負契約書)になります。

ちょっと不思議な感覚かもしれませんが、国等が所持する契約書は印紙が貼られたもので、国等以外の者が所持する契約書には印紙が貼られていないということになります。

 

契約書に印紙税を貼り忘れていたとしても、その契約自体が無効になるわけではありませんが、貼り忘れなどには十分ご注意ください。

所得拡大促進税制の見直し

所得拡大促進税制は平成25年度税制改正で創設された税制で、平成24年度給与支給総額からの増加額の10%を税額控除できる制度ですが、平成29年度税制改正において、引続き高い賃上げを行う企業を支援するとともに、大企業と中小企業の賃金水準の格差が拡大している中で、高い賃上げを行う中小企業への支援が強化されました。

こちらでは、中小企業の場合について説明していきます。

現行の所得拡大税制では次の3つの要件を満たしている必要があります。

【要件】

  1. 平成29年度の給与等支給額の総額が平成24年度と比較して3%以上増加していること
  2. 給与等支給額の総額前事業年度以上であること
  3. 平均給与等支給額前事業年度を上回ること

平成29年度改正で、上記3の要件について次のように改正されました。

《中小企業の場合》 

賃上げ率が

2%未満の場合

税額控除10%を維持

(雇用者給与等支給増加額×10%)

賃上げ率が

2%以上の場合

雇用者給与等支給増加額×10%+

前年度からの増加額×12%

(合計22%)

※賃上げ率は、次の算式により計算します。

(平均給与等支給額-比較平均給与等支給額)÷比較平均給与等支給額

※この改正は、平成29年4月1日から平成30年3月31日の間に開始する事業年度に適用されます。

 


具体的な例をとって計算していきたいと思います。

①基準事業年度:基準雇用者給与等支給額が1,000

②前事業年度:比較雇用者給与等支給額が1,200

③適用年度:雇用者給与等支給額が1,500

だとすると・・・

(1,500-1,000)×10%+(1,500-1,200)×12%=86

の税額控除ができます。

改正前だと、(1,500-1,000)×10%=50の税額控除にとどまっていました。

 

中小企業の12%上乗せは、事業主の社会保険料負担の増加に対する配慮とも言われています。申告に際しては、税額控除を受けることができるかどうか、今一度ご確認ください。

 


《用語の説明》

(1)雇用者給与等支給額

国内雇用者(法人の使用人のうち国内事業所に勤務する雇用者(雇用保険の一般被保険者でない者も含む。)をいい、法人の役員、役員の特殊関係者、使用人兼務役員を除く。)に対して支給する俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与の額で、当該適用事業年度において損金算入される金額をいいます。
また、給与等に充てるため他の者(当該法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含む)から支払を受ける金額(例えば出向負担金)がある場合には、その金額を控除する必要があります。

・給与等に含まれるものの例:賃金、勤勉手当、残業手当など給与所得とされるもの

・給与等に含まれないものの例:退職手当など給与所得とされないもの

※決算賞与については、損金算入される事業年度の雇用者給与等支給額に含まれます。

(2)基準雇用者給与等支給額

平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の前事業年度の雇用者給与等支給額をいいます。すなわち、平成25年4月1日より前に事業を行っている法人の場合には、平成24年度(個人事業主の場合は、平成25年)の雇用者給与等支給額が基準雇用者給与等支給額となります。なお、基準事業年度の月数と当該適用事業年度の月数とが異なる場合、基準事業年度の雇用者給与等支給額に当該適用事業年度の月数を乗じてこれを基準事業年度の月数で除して計算した金額を基準雇用者給与等支給額とします。

例1:3月末締めの会社の場合
→平成24年4月から平成25年3月までが基準事業年度となります。

例2:12月末締めの会社の場合
→平成25年1月から平成25年12月までが基準事業年度となります。

(3)雇用者給与等支給増加額

適用年度の雇用者給与等支給額(1)から基準雇用者給与等支給額(2)を控除した金額をいう。

(4)平均給与等支給額

雇用者給与等支給額から日々雇い入れられる者に係る金額を控除した金額を、適用事業年度における給与等の月別支給対象者(当該適用事業年度に含まれる各月ごとの給与等の支給の対象となる国内雇用者のうち日々雇い入れられる者を除きます。)の数を合計した数で除して計算した金額をいいます。月別支給対象者について、その月に給与を支給されたすべての人数を合計するため、月途中での退職や採用があった場合にも人数に含めます。

(5)比較雇用者給与等支給額

適用事業年度の前事業年度の雇用者給与等支給額をいいます。なお、前事業年度の月数と当該適用事業年度の月数とが異なる場合、当該前適用事業年度の雇用者給与等支給額に当該適用事業年度の月数を乗じてこれを当該前事業年度の月数で除して計算した金額を比較雇用者給与等支給額とします。

例1:平成25年10月に、3月締めの会社を設立した場合で、平成26年度(12か月)の比較雇用者給与等支給額を計算する場合。
→ 比較雇用者給与等支給額=(平成25年10月~平成26年3月の雇用者給与等支給額)×12÷6

例2:平成25年10月に、3月締めの会社を設立した場合で、平成27年度(12か月)の比較雇用者給与等支給額計算する場合。
→ 比較雇用者給与等支給額=(平成26年4月~平成27年3月年度の雇用者給与等支給額)

 

「みなし役員」に注意

中小企業では、社長の奥様に給料を支払っている場合が多くありますが、この奥様に支払われた給料はどのような取扱いになるのでしょうか?

奥様が役員になっている場合は、役員給与とされるため法人税法上の規制を受けることになります。定期同額でなければいけないとか、過大な役員給与は否認されることもあります。

では、奥様が役員でなかった場合はどうでしょうか?

役員じゃないから、従業員と同様の扱いになるでしょうか?

会社法上の役員は、取締役、監査役、執行役、理事、監事などで登記されている人になりますが、法人税法上の役員は、その範囲が広くなっており、役員とみなされる場合があるので注意が必要です。これを「みなし役員」と言います。

「みなし役員」とされるのは、次のような場合になります。

1.法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)以外の者でその法人の経営に従事しているもの

例えば、相談役や顧問のような方で、その法人における地位や職務等からみて他の役員と同様に実質的に経営に従事している方が該当します。

また、「職制上使用人としての地位」とは、部長、課長、支店長、工場長、営業所長、主任等の法人の機構上定められている使用人たる地位をいい、このような地位にある方は除かれているので、例えば工場長の地位のみ有していて、実質的に経営には従事していない方はみなし役員には該当しないことになります。

つまり、会社法上は会社の役員になっていなくても、実質的には役員と変わらない方が該当してきます。

2.同族会社の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)のうち、次に掲げるすべての要件を満たす者で、その法人の経営に従事しているもの

 (1)その法人の株主グループ(その会社の一の株主等及びその株主等と親族関係など特殊な関係のある個人や法人をいいます)をその所有割合の大きいものから順に並べた場合、その使用人が次のいずれかの株主グループに属していること。

  • 所有割合50%超の第一順位の株主グループ
  • 第一順位と第二順位の所有割合を合計したときに50%超となる場合のこれらの株主グループ
  • 第一順位から第三順位までの所有割合を合計したときに50%超となる場合のこれらの株主グループ

(2)その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること。

(3)その使用人とその配偶者(これらの者の所有割合が50%超である他の会社を含む)の所有割合が5%を超えていること。

※株式の所有割合を満たしていても、会社の経営に従事していなければ「みなし役員」にはなりません。

 

では、上記1,2いずれにも共通している「その法人の経営に従事している」という要件は、どのような場合を指すのでしょうか?

判例や裁決事例をみてみると、会社内で重要な地位に就いていたとしても、事業内容の決定、主要な取引先の選定、重要な契約に関する決定、売上価額の決定、資金繰り計画、従業員の採用・給与・退職の決定など、会社における重要な職務に従事している等、実質的に他の役員と同様に会社の経営に従事している場合が該当すると考えられます。

具体的な裁決事例は、下記のようなものがあります。

 

・経営に従事していると判断された事例

《商業登記簿上の役員でなくても実質的に会社の経営に従事している者に支給した賞与の額は役員賞与に該当するとした事例》(裁決事例集No.20-181頁)

商業登記簿上の役員でない者であっても、自己の名義によって金融機関から事業用資金を借り入れることを決定するなど請求人の資金計画を行い、また、商品の仕入れ及び販売の計画並びに従業員の採用の諾否及び給与の決定を行うなど専ら自己の責任において請求人の業務を運営していることが認められるので、当該者は法人税法施行令第7条第1項第1号に規定する使用人以外の者で請求人の経営に従事している者に該当し、同法第2条第15号に規定する役員に当たるから、同人に支給された賞与の額を役員賞与として損金の額に算入しなかった原処分は適法である。(昭和55年2月20日裁決)

 

・経営に従事しているとされなかった事例

《同族関係者で一定割合の株式を所有する使用人に支給した賞与は役員賞与に該当しないとした事例》(裁決事例集No.16-36頁)

同族会社の同族関係者である使用人が同社の株式を一定割合以上保有しているが、その使用人は、同社の電気工事部門の責任者として請求人の他の使用人と専ら電気工事の現場作業に従事しているだけで、請求人の電気工事の大口工事の受注契約並びに材料の購入、資金計画、従業員の給与及び賞与の額等、請求人の経営に係る重要事項の決定の業務は代表取締役が専ら行っており、その使用人は当該業務に従事せず、請求人の経営に従事しているとは認められないから、その使用人に対する賞与は法人税法第35条第1項に規定する役員賞与に該当しないので、その賞与の額は損金の額に算入するのが相当である。(昭和53年7月17日裁決)

 

「みなし役員」に該当する場合には、役員とみなされる以上、法人税法の規定の適用を受けることになるので、定期同額給与や事前確定届出給与に該当する場合を除き、支払った給与は損金に算入されないということになってきます。定期同額給与の改定時期・事前確定届出給与の届出書の提出期限については、役員の方と同様の取扱いになります。また、「みなし役員」の職務の内容や会社の収益の状況、その会社と同種の事業・類似の事業規模の役員に対して支払われる給与の状況などを勘案して、相当な金額である必要があります。

 

同族会社の社長の親族である場合は特に、「みなし役員なのではないか?」とみられてしまう可能性が高いので、職務の権限や内容などを明確にして、経営に従事していないことをきちんと立証できるようにしておくことが大事になってきます。

 

 

「事前確定届出給与」の活用と注意点

役員への給与は原則として毎月同じ金額を支給する「定期同額給与」でなければ損金にならないので、役員に賞与を支給しても、税務上は損金になりません。役員に賞与を支払った場合は、その分は経費にならないイメージです。

しかし、あらかじめ役員賞与の支給時期と支給額を確定し、かつ、事前に所定の届出書(「事前確定届出給与に関する届出書」)を決められた期限までに税務署に提出することにより、役員へ支払った賞与も損金に算入することができます。

「事前確定届出給与に関する届出書」は毎期届出が必要であるため、提出を忘れてしまった場合はその決算期は役員賞与を支給しても損金には算入できなくなるため注意が必要です。

そして、「事前確定届出給与」は、①届出の提出期限を守ること②届出書の記載どおりに給与を支払うことが重要になっています。

 

「事前確定届出給与に関する届出書」の提出期限は、下記のとおりとなります。

(1)株主総会、社員総会等の決議により所定の時期に確定額を支給することを定めた場合

次のイまたはロのうちいずれか早い日

  • イ.支給の決議をした株主総会、社員総会等の日(その決議をした日が職務の執行を開始する日後である場合にはその開始する日)から1か月を経過する日
  • ロ.その会計期間開始の日から4か月を経過する日

 

(2)新たに設立した法人が決議により所定の時期に確定額を支給することを定めた場合

  • その設立の日以後2か月を経過する日

 

(3)臨時改定事由により新たに「事前確定届出給与」の定めをした場合

次のイまたはロのうちいずれか遅い日

  • イ.(1)の届出期限
  • ロ.臨時改定届出事由が生じた日から1か月を経過する日

 

例えば、(1)の事例で考えてみると、3月決算法人が6月20日に株主総会を開催した場合、イは7月20日、ロは7月31日となるので、いずれか早い日は7月20日となり、7月20日が届出書の提出期限となります。

 

また、届出書の記載事項は、下記のとおりとなります。

  1. 事前確定届出給与に係る株主総会等の決議をした日とその決議をした機関等
  2. 事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日(定時株主総会の日など)
  3. 臨時改定事由の概要とその臨時改定事由が生じた日
  4. 事前確定届出給与等の状況→詳しくは届出書とは別に「付表(事前確定届出給与等の状況)」に記載して添付しなければいけません。
  5. 事前確定届出給与につき定期同額給与による支給としない理由と事前確定届出給与の支給時期を付表の支給時期とした理由

 

次に、具体的にどのような場合に損金算入が認められないのかみていきます。

・1回でも支給額が届出と異なる場合、支給額のすべてが損金不算入となってしまいます。

・支給の時期が届出書と異なっている場合は、例えば2回事前確定届出給与を支給すると届出ていて、1回目は届出どおりに支給しても2回目が届出の時期とずれていた場合、2回とも損金に算入できなくなってしまいます。

・届出書に記載した以外の支給があった場合、例えば業績が当初の予定よりも好調で賞与を届出書記載以外にも支給した場合、事前確定届出給与は届出書のとおりに支給していれば、届出書記載以外に支給した分について損金不算入になりますが、事前確定届出給与については損金算入されます。

 


 

では、「事前確定届出給与に関する届出書」を提出していたけれど支給を全くしなかった場合、損金不算入額といっても支給をしていないため、零になって問題がないようにも思えますが、事前確定届出給与は支払の確定した日(株主総会等において事前に定められた支給日)から1年を経過した日までに支払いがされない場合には、その1年を経過した日に支払いがあったものとみなして源泉徴収することになっているので、実務上は注意が必要となってきます。

支給をしない場合には、支給日以前に事前確定届出給与の受取りを辞退したことを書面等で明確にしておき、源泉徴収をしなくてもいいようにしておくとよいでしょう。

 


 

また、事前確定届出給与は、臨時改定事由(役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更その他これらに類するやむをえない事情)もしくは業績悪化事由(経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由)に該当する場合には、「事前確定届出給与に関する変更届出書」を所定の期限内に提出するすれば、変更後の金額での損金算入が認められています。提出期限は下記のとおりです。

  • 臨時改定事由が生じた場合・・・臨時改定事由が生じた日から1か月を経過する日まで
  • 業績悪化事由が生じた場合・・・業績悪化による当初届出の変更に係る株主総会等の決議をした日から1か月を経過する日まで。ただし、給与の支給の日(当該決議をした日後最初に到来するものに限ります。)が、株主総会等の決議をした日から1か月を経過する日の前にある場合には、その支給の日の前日まで。

 

事前確定届出給与は、せっかく届出書を提出しても届出書どおりに支給していないと損金不算入といったことになってしまうので、きちんと届出書どおりの支給時期、支給金額を支払うように注意してください。臨時改定事由や業績悪化事由に該当する場合には、変更届出書の提出を提出期限までに提出するようにしましょう。また、支給時期や支給金額に変更がなくても毎期届出書は提出する必要があるので、そちらも忘れないようにしてください。

 

 

 

積立NISAの創設

NISA(ニーサ)は、平成26年1月から開始されており、「少額投資非課税制度」とも呼ばれています。NISAは、株式や投資信託などの譲渡益や配当金を非課税にする制度をいい、経済成長と将来の資産形成を支援することを目的としています。

現行のNISAは、投資した年から120万円分(平成27年分以前は100万円分)が最長5年間非課税となります。口座開設が可能な期間は平成26年から平成35年となっています。

この現行のNISAが積立て型の投資に利用しにくいこと、家計の安定的な資産形成を支援する観点から、平成29年度税制改正で、少額からの積立・分散投資を促進するための積立NISAが創設されました。この積立NISAは平成30年1月からスタートします。

積立NISAは、年間の投資額は最大40万円(現行のNISAは最大120万円)を投資した年から20年(現行のNISAは5年)という長期にわたって非課税で運用できる制度になっています。口座開設可能期間は、平成30年から平成49年までです。

非課税枠を最大限活用した場合、40万円×20年間=800万円となるので、現行のNISAよりも非課税での投資総額(最大600万円)は大きくなります。

ただし、積立NISAの場合は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資商品で、金融庁が定める要件を満たしたものに限られています。現行のNISAは「株式」「投資信託」を購入できますが、積立NISAの場合は長期的な資産形成を目的としているため「投資信託」に限られています。例えば、バランス型ファンド非毎月分配型ファンドがあります。

また、積立NISAは現行のNISAとの併用はできません。どちらかを選択することになります。

投資信託で長期的に資産形成をしたいという方は、積立NISAが向いていると思いますが、株式投資もしたいという方は現行のNISAを活用する方が使い勝手が良いかもしれません。

現行のNISAは、平成29年3月末までで累計投資額が10兆円に達したとう新聞記事がありました。年明けからの株高が続いたことも追い風となっているようですが、家計の金融資産1800兆円のうちわずか0.5%にとどまっており、金融資産のうち937兆円は預貯金に眠ったままのようです。

現行の成人版のNISAに加え、0歳から19歳までの未成年者を対象として平成28年4月から始まった「ジュニアNISA」というものもあります。これは、高齢者の資産を若年層へシフトしていくのが狙いとなっています。未成年者の名義で口座を開き、原則として親権者が代理で運用管理をしていきます。年間80万円分が非課税投資枠となっており、成人版のNISAと同様に最長5年間が非課税期間となっています。ジュニアNISAの場合は、18歳までは払い出しに制限があります。

ジュニアNISAは、平成29年3月末時点の主要証券会社10社合計の口座数が9万1328口座で、現行の成人版NISAの2%にとどまっているようです。ジュニアNISAは、制度ができてからまだ1年ほどですが、現行の成人版NISAにしてもジュニアNISAにしても、まだまだ金融資産は中高年から現役世代へ浸透しておらず、貯蓄から投資への動きがいま一つの印象を受けます。

平成29年度税制改正で創設された積立NISAも含めて、手続きの簡素化や使い勝手の良さが求められるところです。