セルフメディケーション税制と医療費控除

平成29年1月1日から医療費控除の特例制度として「セルフメディケーション税制」が始まりました。実際に申告に影響があるのは平成29年分の確定申告からの適用となります。この「セルフメディケーション税制」は、どのような制度なのか、今までの医療費控除とは何が違うのかについて紹介していきます。

 

・「セルフメディケーション税制」ってどんな制度?

 この「セルフメディケーション税制」の趣旨は、風邪などの軽い病気を、病院に行かずに市販薬で治してくれた人の税金を安くしましょうというものです。つまりは、国庫負担が増加している医療費の負担を少しでも抑えようという狙いが背景にあります。今までの医療費控除における医薬品の購入については、治療や療養に必要な医薬品の購入費用で、病気や怪我の治療のためのもののみが対象となっていましたが、セルフメディケーション税制では、病気の予防や健康増進のために用いられるものでも税制対象のスイッチOTC医薬品であれば控除の対象となるのが特徴となっています。

 

・「セルフメディケーション税制」を受けるための要件は?

 

(1)適用対象スイッチOTC医薬品を年間1万2千円超購入していること

(2)予防接種健康診断を受けていること

となっており、

適用対象スイッチOTC医薬品の年間購入額-1万2千円(控除額は最大8万8千円)

を所得から控除することが出来るという制度になっています。

 ところで、適用対象となるスイッチOTC医薬品は、成分として82種類が定められており、対象となる医薬品は1636品目(平成29年8月18日現在)に限定されています。対象医薬品の一覧が厚生労働省のホームページに掲載されていますが、これを見ながら店頭で適用対象なのかどうかを確認するのはかなり面倒かもしれません。製薬会社によっては、セルフメディケーション税制対応の商品なのかどうか自主的にパッケージに識別マークをつけているところもあるので、ご覧になられた方もいらっしゃるかもしれません。ドラッグストア等では、適用対象スイッチOTC医薬品に該当する場合は、レシートに☆印や何らかのマークをつけて識別できるようにしています。

 

・確定申告に必要なものは?

(1)適用対象医薬品のレシート・領収証で、①商品名、②金額、③当該商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨、④販売店名、⑤購入日が明記されていることが必要となっています。

 今までの医療費控除と同様にセルフメディケーション税制も、「自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族」が購入した薬品が対象になるので、自分の分だけでなく、家族の分(扶養親族であるか否かは問いません)のレシートや領収証も取っておいてください。

(2)予防接種や健康診断を受けたことの証明書

 健康診断を受けていなくても、インフルエンザの予防接種を受けているだけでも対象となります。この場合は領収証を提出してください。市町村のがん検診や会社の定期健康診断を受けた場合は、領収証又は結果通知表を提出することになります。市町村が実施するがん検診は、がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針について(平成 20 年 3 月 31 日通知健発第 0331058 号)に基づき実施される、胃がん、子宮頸がん、肺 がん、乳がん、大腸がんの5項目に限られるので、市町村の住民サービスとして、 対象の項目や年齢を拡大しているものは対象にはなりませんのでご注意ください。

 また、所得控除を受ける人が予防接種や健康診断を受けて、病気の予防や健康増進に取り組んでいることが要件となっているため、扶養家族、例えば子どもが予防接種を受けていても所得控除を受ける本人が予防接種や健康診断を受けていなければ要件には当てはまりません。

 

・今までの医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらも同時に使えるのか?

 今までの医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらも同時に使えるわけではありません。どちらかを選択することになります。

 

・では、どちらを選択すると有利なのでしょうか?

医療費が10万円以下の場合は、セルフメディケーション税制しか適用できません。

医療費が10万円超だとしても適用対象スイッチOTC医薬品の購入額が1万2千円以下の場合は、医療費控除を選択するしかありません。

問題となってくるのが、年間医療費10万円超かつ、適用対象スイッチOTC医薬品の購入額が1万2千円超の場合となってきます。

この場合について総所得金額が200万円以上の方の場合で考えてみると、

・年間医療費(適用対象スイッチOTC医薬品+その他医療費の合計)が18万8千円を超える

  ⇒ 今までの医療費控除が有利

・年間医療費(適用対象スイッチOTC医薬品+その他医療費の合計)が18万8千円以下でその他医療費

8万8千円以下の場合

  ⇒ セルフメディケーション税制が有利

となっています。

 今までの医療費控除は、医療費が10万円を超えていないと適用されていなかった(総所得金額が200万円以上の方)ので医療費控除はあまり関係なかった方も、セルフメディケーション税制によって減税となる可能性が増えました。実際、金額によっては手間がかかる割には減税効果がイマイチと感じられる場合もあるかとは思いますが、セルフメディケーション税制は、平成29年1月1日から平成33年12月31日まで(4年間)の時限措置となっておりますので、この機会にぜひご活用ください。