物納できる財産の順位と財産の範囲が変わりました

物納とは、相続税を金銭で納付することが困難な場合に、相続財産となった土地等の不動産などで相続税を納付することですが、平成29年税制改正により、物納できる財産の順位と財産の範囲が変わりました。この改正は、平成29年4月1日以降の物納申請分からの適用となります。

相続税は、金銭で一括納付することが原則となっています。しかし、納期限までに金銭での一括納付が困難で、かつ、一定の要件を満たしている場合には、その納付が困難な金額を限度として分割での納付(延納)が認められます。そして、延納によっても金銭で納付することが困難な場合には、延納によっても金銭納付が困難な金額の範囲内で、物納が認められています。

物納が認められるためには、下記のすべての要件を満たしている必要があります。

  1. 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
  2. 物納を申請する財産は、相続財産のうち、物納が認められている財産であり、かつ、定められた順位によっていること
  3. 物納に充てることができる財産は、管理処分不適格財産(担保権が設定されている不動産、境界が明らかでない不動産、権利の帰属について争いがある不動産、譲渡制限株式等)に該当しないものであること及び物納劣後財産(地上権、永小作権を目的とする賃借権、地役権等が設定されている土地、法令の規定に違反して建物等)に該当する場合には、ほかに物納に充てるべき適当な財産がないこと。
  4. 物納しようとする相続税の納期限又は納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること。

 

今回の改正では、物納できる財産の順位と財産の範囲が変わりました。

  • これまで物納順位が第2順位であった「社債及び株式等の有価証券のう金融商品取引所に上場されているもの等」が第1順位となりました。
  • これまで物納できなかった有価証券でも、「金融商品取引所に上場されているもの等」は第1順位で物納できるようになりました。

 

≪第1順位≫

①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等

②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

≪第2順位≫

③非上場株式等

④非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

≪第3順位≫

⑤動産

※相続開始前から被相続人が所有していた「特定登録美術品」は、上記の順位によることなく物納に充てることができる財産とすることができます。

※「特定登録美術品」とは、「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」第2条第3号に規定する登録美術品をいい、重要文化財や国宝、その他、世界的に優れた美術品を国が登録し、登録した美術品を美術館において公開するものです。これを物納するためには、相続開始の時にすでに登録を受けていることが必要です。

 

第1順位の上場株式等の具体例としては、下記のようなものがあります。

〈金融商品取引所に上場されているもの〉

社債、転換社債型新株予約権付社債、特殊法人債、特定社債券、株式、優先株式、新株予約権証券、ETF、REIT、JDR、ETN、日銀出資証券、優先出資証券、特定目的信託の受益証券等

〈金融商品取引所に上場されていないもの〉

オープンエンド型の証券投資信託の受益証券、オープンエンド型の投資法人が発行する投資証券

 

物納に充てる財産の価額が、物納申請の税額を超えないように財産を選定することになりますが、他に適当な価額の財産がなく、その財産の性質・形状等により分割することが困難な場合など、やむを得ない事情があると税務署長が判断した場合には、物納申請の税額を超える財産による物納が認められます。

この場合には、物納申請にあたって適宜の様式により『やむを得ない事情を記載した書面』を提出することになります。

年金の受給資格期間が10年に短縮

平成29年8月1日時点で、老齢年金の受給資格を得るために必要とされる「保険料納付済期間と保険料免除期間」(受給資格期間)が10年に短縮されることになりました。

現状は受給資格期間が25年以上必要なので、この改正によって年金の受給資格者が増加することになります。

受給資格期間が10年以上25年未満で、下記の生年月日に該当する人には平成29年2月下旬から7月上旬の間に日本年金機構から「年金請求書(短縮用)」と年金の請求手続きのご案内が送付されます。

  • 大正15年4月2日~昭和17年4月1日生まれ →平成29年2月下旬~3月下旬送付
  • 昭和17年4月2日~昭和23年4月1日生まれ →平成29年3月下旬~4月下旬送付
  • 昭和23年4月2日~昭和26年7月1日生まれ →平成29年4月下旬~5月下旬送付
  • 昭和26年7月2日~昭和30年10月1日生まれ【女性】→平成29年5月下旬~6月下旬送付
  • 昭和26年7月2日~昭和30年8月1日生まれ【男性】→平成29年5月下旬~6月下旬送付
  • 昭和30年10月2日~昭和32年8月1日生まれ【女性】→平成29年6月下旬~7月上旬送付
  • 大正15年4月1日以前生まれの方 →平成29年6月下旬~7月上旬送付
  • 共済組合等の期間を有する方 →平成29年6月下旬~7月上旬送付

請求手続きは29年8月1日以前でも可能となっています。

また、この請求手続きは、海外からも行うことができます。

海外から年金を請求するときは、日本年金機構のホームページからダウンロードした年金請求書に記入をし、必要書類を添えて、日本での最終住所地を管轄する年金事務所へ提出することになります。

年金の決定後、平成29年8月以降に「年金証書・年金決定通知書」が送られてきます。年金の支払いは、平成29年10月以降となります。

 

ところで、受給資格期間が10年に満たない場合はどうなるのでしょうか?

受給資格期間が10年に満たない場合でも「国民年金の任意加入制度」や「後納制度」を活用すれば、10年という要件を満たすことができる場合があります。

「国民年金の任意加入制度」とは、以下の条件に当てはまる方が対象となります。

(1)日本国内に住所がある人で、年金額を増やしたい方は65歳までの間
(2)日本国内に住所がある人で、受給資格期間を満たしていない方は70歳までの間
(3)海外に住所がある人で20歳以上65歳未満の方(日本国籍を有する人に限る)

また、後納制度とは時効で納めることができなくなった国民年金保険料を平成27年10月~平成30年9月までの3年間に限って、過去5年分まで納めることができる制度です。

注意点として、老齢基礎年金を満額で受給するためには40年の保険料納付期間が必要なため、10年間の保険料納付期間だけでは年金額は少額となるということはご留意ください。

平成29年4月から短時間労働者の適用対象が広がります

平成28年10月1日から、厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の企業に勤務する短時間労働者が、厚生年金保険等の適用対象となりました。

 

短時間労働者とは、勤務時間・勤務日数が常時雇用者の4分の3未満で、下記の①~④のすべての要件に該当する方となります。

①週の所定労働時間が20時間以上であること

週の所定労働時間とは、就業規則、雇用契約書等によって、その者が通常の週に勤務すべき時間となります。

②雇用期間が1年以上見込まれること

  • 期間の定めがなく雇用される場合
  • 雇用期間が1年以上である場合
  • 雇用期間が1年未満であり、雇用契約書に契約が更新される旨が明示されている、または、同様の雇用契約で雇用された者が更新等により1年以上雇用された実績がある場合

 

③賃金の月額が8.8万円以上であること

週給、日給、時間給を月額に換算したものに、各諸手当等を含めた所定内賃金の額が8.8万円以上である場合となります。ただし、次に掲げる賃金は除かれています。

  • 臨時に支払われる賃金および1か月を超える期間ごとに支払われる場合(例えば、結婚手当、賞与等)
  • 時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(例えば、割増賃金等)
  • 最低賃金法で算入しないことを定める賃金(例えば、精勤手当、皆勤手当、通勤手当、家族手当)

 

学生でないこと

ただし、次に掲げる方は被保険者となります。

  • 卒業見込証明書を有する方で、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の方
  • 休学中の方
  • 大学の夜間学部および高等学校の夜間等の定時制の課程の方

 

厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の企業に勤務する短時間労働者に加えて、平成29年4月から被保険者数が常時500人以下の企業のうち、次の①または②に該当する事業所に勤務する短時間労働者も厚生年金・健康保険の適用対象となり、その対象が広がりました。

 

①労使合意(働いている方々の2分の1以上と事業主が社会保険に加入することについて合意すること)に基づき申出をする法人・個人の事業所

②地方公共団体に属する事業所

短時間労働者に該当する方を採用した場合は、速やかに短時間労働者用の「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出することになります。

また、労使合意に基づき申出をする場合は、労働者の同意を得たことを証する書類(同意書)を添付の上、本店または主たる事務所の事業主から「任意特定適用事業所申出書/取消申出書」を提出します。

同意書については、いろいろなパターンの書式があるので日本年金機構のホームページをご参考になさってください。

 

クラウド会計のメリット

大阪総合労務会計事務所では、クラウド会計を積極的に導入していますが、クラウド会計についてどのようなイメージを持たれているでしょうか?

難しそう、取っつきにくい、導入してもいいけど手間なんじゃないか?、便利そうだけどどうしたらいいのか分からない。

他にも様々なイメージや考えを持たれている方がいらっしゃると思います。

今では当たり前のように使われているGmailやDropBoxはクラウドサービスです。

では、クラウドってそもそも何なのでしょう?

クラウドは、どこにいても、どのデバイスからでもIDやパスワードがわかれば接続できるサービスです。GmailやDropBoxなどのクラウドサービスを使ってらっしゃる方は、すぐにお分りいただけると思います。

会計についても今後はどんどんクラウド化が進展していくと言われています。会計だけではなく、給与計算や顧客管理、在庫管理など経営するうえで欠かせないところもクラウド化していくことが予想されます。

 

では、クラウド会計はどんなメリットがあるのでしょうか?

 

・複数の人が同時に同じ会計データを閲覧することができる。

例えば、経営者と経理担当者、企業と税理士事務所がリアルタイムに同じデータを共有できるので、よりスピーディに経営判断などを行うことができます。

 

・銀行やクレジットの取引を自動で取り込むことができる。

インターネットバンキングを使っている銀行口座、クレジット決済の取引、amazonなどのWeb通販の取引を自動で取り込むことができるので、取引を一つ一つ入力するという作業が不要となります。もちろん、取り込んだデータがすべて正しい勘定科目で取り込まれるとは限らないので、勘定科目の選択が必要になってくるものもありますが、一つ一つ手作業で入力するのと比べると格段の違いとなります。

 

このようにメリットの大きいクラウド会計ですが、デメリットはないのでしょうか?

セキュリティー面で不安に思う方もいるかもしれません。データのバックアップは大丈夫なのか?と心配される方もいるでしょう。

クラウドサービスを提供している運営会社は、最高水準のセキュリティ対策やバックアップ体制をしているので、自社で管理しているよりも安全と言えると思います。

 

また、クラウド会計を無料期間を使って試してみようかな?という方もいらっしゃると思います。

 

無料期間で試される方は、インターネットバンキングの手続きやクレジット明細をwebで見れるようにしておくなど、準備をしてから試すことをおすすめします。

インターネットバンキングの手続きは、金融機関にもよるかもしれませんが意外と時間がかかります。せっかくの無料期間がどんどんすぎてしまうともったいないので、ぜひ準備をされてから試すようにして下さい。

 

 

 

 

国民年金の強制徴収の対象者拡大

国民年金保険料の納付は、国民の義務となっており、保険料を納付しない方に対しては強制徴収という制度がとられることになっています。

サラリーマンの方などは、厚生年金保険料を会社のお給料から天引きされるので未納ということはほぼ考えられないのですが、国民年金保険料の場合は、自営業の方などとなるためこのような天引きということも行えないことから、どうしても未納ということも起きてしまいます。

 

国民年金保険料は、納付が経済的に難しときは保険料免除納付猶予という制度もあります。

保険料免除や納付猶予になった期間は、年金の受給資格期間(25年間)に算入されます。年金は、せっかく納付していた期間があってもこの受給資格期間、現在は25年間の納付がない場合は受給できないことになっています。また、年金額を計算する場合も、保険料を納めていない免除期間であっても、保険料を納めた時の2分1(平成21年3月までの免除期間は3分の1)は年金の支給額に反映されます。(納付猶予になった期間は年金額には反映されません。)どうしてもというときは、未納のままにしておかないで、必ず免除や納付猶予の手続きをするようにしましょう。

 

所得が一定以上ある方に対しては、保険料免除や納付猶予ということにはならないので、国民年金保険料の未納が続くと最終的には強制徴収ということになってきます。強制徴収と言っても滞納していた人すべてが強制徴収の対象となるのではなく、「十分な保険料負担能力があり、度重なる納付督励を行ったにもかかわらず、保険料の納付がない場合」に、強制徴収で財産差押えということになります。

 

現在は、「所得350万円以上」で、「未納月数が7か月以上」の人に対して、この強制徴収が行われることになっています。

 

直近の国民年金の納付率をみてみると、平成28年4月~9月までの納付率が平成28年10月末時点で59.1%となっており、前年度と比べると2.4ポイント増加していますが、まだまだ納付率が高いとはいえない状況となっています。

 

このような状況もあり、公的年金の公平性という観点から、日本年金機構は新年度から強制徴収の対象者を「所得300万円以上」で「未納月数13カ月以上」に変更すると発表しました。

未納月数は7カ月から13カ月以上に伸びますが、強制徴収の対象者は増加し、現在の強制徴収の対象者27万人が約9万人増加して36万人程度になる見通しとなっています。

 

強制徴収の流れとしては

  1. 滞納が続いている人に文書や電話、個別訪問などで納付を要請
  2. 要請に応じなければ「催告状」を送付
  3. 日本年金機構は、国税徴収法に則り、市町村から情報を得るなどして所得を確認し、強制徴収の対象者に「特別催告状」を送付
  4. 最終催告状送付後、指定期限までに納付されないものに対しては「督促状」が送付
  5. 督促状の指定期限までに納付されない場合は、滞納処分が開始され、延滞金が課せられる
  6. 預貯金の残高などの財産調査が行われる
  7. 「差押予告」を送付
  8. 強制執行によって財産の差し押さえが行われる

 

もし、本人が納付できない場合、滞納者本人の財産だけでなく、滞納者の世帯主や配偶者といった連帯納付義務者である親族の財産まで差押えが及ぶこともあるので注意が必要です。

海外勤務者の社会保険

前回のお役立ちコラムでは、「海外勤務者の源泉徴収」について触れましたが、今回は、海外勤務者の社会保険料について考えてみたいと思います。

海外勤務者の場合は、①在籍型出向で出向元の国内企業から給与の一部または全部が支払われている場合、②在籍型出向だが国内企業からは給与が支払われない場合および移籍型出向の場合で、その取扱いが異なっています。

まず①の在籍型出向で出向元の国内企業から給与の一部または全部が支払われている場合についてみていきます。

在籍型出向の場合は、日本の企業との雇用関係を維持したまま海外で勤務することになりますが、出向元の日本の企業から給与の一部または全部が支払われているときは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の被保険者資格は継続することになります。したがって、社会保険料の負担も労使共に生じることになります。

健康保険についてですが、まず海外勤務者が日本に一時的に帰国した際は日本に暮らす方と同様で健康保険を利用することができます。一方、海外でかかった医療費については、いったんは海外勤務者本人が立て替えし、後日申請手続きを行って、一部支給してもらうことになります。

具体的な手続きとしては、「療養費支給申請書」を記載し、領収証明書を添えて保険者に申請します。領収証明書が外国語で書かれている場合には日本語の翻訳文を添付する必要があります。また、海外勤務者からの支給申請は、原則として事業主を経由して行い、支給された療養費は事業主が代理で受領します。したがって、保険者から外国送金は行われません。

また、平成28年4月1日からさらに次の添付書類が必要になりました。

  1. 旅券、航空券その他海外に渡航した事実が確認できる書類の写し
  2. 保険者が海外療養の内容について当該海外療養を担当した者に照会することの同意書

 

次に、介護保険料については、海外では介護保険のサービスを受けることができないので、住民票を除票していれば、介護保険料を支払う必要はありません

雇用保険についても在籍型出向の場合は、継続しますが、失業給付等を受ける場合は帰国した時しか受給はできません。

 

今度は、②の在籍型出向で国内企業から給与が全く支払われていない場合および移籍型出向の場合についてみていきます。

移籍型出向の場合、日本の出向元との雇用関係はいったん終了し、勤務先の国の現地法人等との雇用関係となります。したがって、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の被保険者資格は喪失するため、継続できません。

健康保険を継続させるには、健康保険の任意継続被保険者の手続きを行うことが考えられます。ただし、最長2年までしか加入はできません。

もう一つ、国民健康保険に加入するということも考えられます。しかし、この場合も、国民健康保険は市区町村に居住する人を対象としているため、住民票を除票しているときは加入はできないということになります。

次に、介護保険につていですが、こちらは①の場合と同様、海外では介護保険サービスを受けることはできないので、住民票を除票していれば保険料も不要となります。ただし、国民健康保険に加入している場合は、住民票の除票ができないため、国民健康保険料と併せて介護保険料も納付しなければなりません。

厚生年金も継続できませんが、対応策としては国民年金に任意加入するという選択肢があります。

以上のように、在籍型出向で国内企業から給与が全く支払われていないまたは移籍型出向でも、健康保険を任意で継続したり、厚生年金が継続できないため国民年金に任意加入という手続きもありますので、参考にしてみてください。

海外勤務者の源泉徴収

所得税法上、日本国内に住所がない人や1年以上の居所がない個人は、「非居住者」とされます。したがって、海外赴任の期間が1年以上の海外勤務者の場合、「非居住者」となります。

非居住者に該当する場合であっても、日本国内で働いたことによって支払われた給与については源泉徴収されることになります。つまり、日本に住む給与所得者と同様となります。

一方、国外で働いたことにより日本にある本社などから支払われた給与については、原則として日本の所得税は非課税となるため、源泉徴収もされないことになります。

したがって、日本から支払われた給与であっても、働いた場所(国)が日本なのか海外なのかで違いが生じることになります。

ただし、同じように海外支店に勤務する人でも日本の法人の役員への報酬については取扱いが異なるので注意が必要です。例えば、日本本社の取締役が海外勤務中に受け取った役員報酬についてです。

役員の場合、企業の経営に従事することを職務としているため、役務提供が現実にどこで行われたかを判定するのが通常は困難であると考えられます。

所得税法では、このような役員に対する報酬については原則として国内で働いたものとして、会社側は役員報酬支払時に20.42%(所得税20%、復興特別所得税0.42%)の源泉徴収をすることになっています。

原則は日本から支払われた役員報酬は源泉徴収の対象となりますが、日本から支払われた給与でも源泉徴収されないケースもあります。

  • 海外の勤務先で常時使用人として働いている場合
  • 赴任先の国と租税条約が結ばれていて、異なる取扱いがあるときはその取扱いが優先される

 

もう一つ注意点としては、海外勤務の日本の法人の役員に対して日本から支払われた報酬が日本の源泉徴収の対象になるからといって、その赴任先の国では源泉徴収されないというわけではありませんので、この点については確認するようにしてください。

 

次に、海外勤務者について源泉徴収票は発行するのか?ということについて考えてみたいと思います。

源泉徴収票は「居住者」について発行することになっています。つまり、「非居住者」について発行する必要はありません。では、「非居住者」については何も発行しなくていいのか?というとそうではなく、「支払調書」を作成することになります。(年の途中から非居住者となった場合は、居住者であった期間分については源泉徴収票の作成が必要です)

この非居住者に対して作成した支払調書のうち、国内で働いたものとして源泉徴収した給与等の年間の支払金額が50万円を超える場合(源泉徴収する前の金額で判定)については、支払いをした年の翌年1月31日までに「非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書合計表」に支払調書を添付して税務署へ提出しなければなりません。

2015年10月5日現在の住民票の情報に基づいて、2016年1月からマイナンバー制度の運用が始まり、非居住者の支払調書についても、マイナンバーを交付されている方については記載が必要となっています。

このマイナンバーは生涯有効なので、マイナンバー取得後に海外赴任となった場合についても提供されたマイナンバーを使用することになります。

2015年10月5日前から日本に住民票がなかった海外勤務者についてはマイナンバーの交付はされていないので、帰国後に市役所等でマイナンバーの交付を受けることになります。

小規模企業共済のメリット・デメリット

「小規模企業共済」は、常時使用する従業員が20人(商業とサービス業(宿泊業、娯楽業を除く)では5人)以下の小規模な個人事業主や会社等の役員が、事業を廃止した場合や会社の役員が役員を退職した場合などに、それまで積み立ててきた掛金に応じた共済金を受け取ることができる国がつくった経営者の退職金制度です。

月額1,000円~70,000円までの範囲(500円刻み)で掛金を設定できます。

この小規模企業共済のメリットは、

  1. 支払った掛金が全額所得控除の対象となるため節税対策になる。
  2. 20年(240ヶ月)以上積み立てていれば、掛金の100%以上の給付を受けることができる。
  3. 払い込んだ掛金合計額の範囲内で、事業資金などの貸付け担保・保証人不要)が受けられる
  4. 受取時、分割で受け取れば公的年金と同様に雑所得とされ、一括受取りの場合は退職所得となり、それぞれ所得控除が受けられる。

とてもメリットの大きい小規模企業共済ですが、下記のようなデメリットがあります。

  1. 掛金の支払いが12ヶ月(1年)未満で解約となった場合は掛け捨てとなる。
  2. 加入期間が20年未満の場合は元本割れとなる。

 

小規模企業共済は、月額70,000円にすれば年間84万円の所得控除を受けることができ、また、掛金の納付期間に応じて最大120%相当額が戻ってくるという大きなメリットがありますが、納付期間によっては元本割れのリスクもあるの注意が必要です。

通勤災害の範囲

労災保険の適用にあたって、これは通勤災害に該当するのか?という問題が生じることがあります。

まず、通勤とは、労働者が就業に関して、下記に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいいます。

  1. 住居と会社との間の往復
  2. 兼業している人は、最初の会社から他の次の会社への移動
  3. 赴任先住居から帰省先住居間の移動

この移動が、業務に就くため、または業務を終了したことにより行われる必要があります。

例えば、次のようなものは業務との関連性が認められます。

  • 寝過してしまって遅刻した場合
  • ラッシュを避けるために早出した場合
  • 時間的に若干の前後があった場合
  • 昼休み等終業の時間の間に相当の間隔があるため帰宅する場合

 

逆に次のような場合は業務関連性が認められません。

  • 運動部の練習に参加する等の目的で、午後の遅番の出勤者である者が朝から住居を出るなど、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合
  • ハローワーク等でその日の紹介を受けるために住居からハローワークまで行く行為

 

また、通勤の途中で、仕事とは関係のない目的で通勤経路をそれたり(逸脱)、通勤の途中で通勤とは関係のない行為を行ったり(中断)すると、逸脱・中断中もそれ以後も原則として通勤と認められないため、通勤災害の認定において問題になるケースもあります。

ただし、下記のような些細な行為については、逸脱・中断とはされません。

  • 経路の近くにあるトイレを使用する場合
  • 駅の売店などで飲み物などを購入する場合

 

これに加えて、逸脱・中断が日常生活上必要な行為であって、やむを得ない事由により行う最小限度のものである場合については、合理的な経路に復した後は、例外的に通勤と認められています。

例えば、次のような行為となります。

  • 日用品の購入のためにスーパーに立ち寄る
  • 出退勤の途中で美容院に立ち寄る
  • 職業訓練・教育訓練を受ける行為
  • 選挙権の行使
  • 病院で診察・治療を受けること
  • 柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の施術を受けること
  • 要介護状態の配偶者・子・父母,
  • 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、並びに同居しかつ扶養している、孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的または反復的に行われるものに限る)

 

事業主の方からすると、もしもの事故のときは労災の保険給付で賄いたいと考えていると思います。

では、事故の可能性が高いと思われるマイカー通勤を許可している事業所の場合について考えてみます。

 

マイカー通勤中の事故で会社が責任を負う可能性は100%ないとは限らないので、下記の点に注意が必要です。

  • 任意保険に加入しているかどうかを必ず確認する。
  • マイカー通勤許可申請書等を作成するなどして、確実に確認する。(運転免許証・保険証券のコピーの添付をしてもらいましょう)
  • 通勤経路申告書を作成してもらい、通勤経路を把握する。

 

また、マイカー通勤規定の作成も有効です。

マイカー通勤規定の中で、例えば「許可の条件」を次のように設定するとよいでしょう。

  • 運転経験○年以上(例えば2年以上)
  • 身体および精神に異常または欠陥がない者
  • 自賠責のほか、任意保険(対人:無制限、対物:無制限)に加入している者
  • 通勤のための公共交通機関がないこと、または極めて不便であること

 

また「禁止事項」として、次のような定めをしておくとよいと思います。

  • マイカーを業務に使用すること
  • 拘束時間中に私用でマイカーを使用すること
  • マイカーに文字・ステッカー等を用いて、社用車と見られるような表示をすること
  • 飲酒や過度の疲労等、安全運転が困難と予想される状態で運転すること
  • 整備不良の車両を使用すること
  • その他、道路交通法令により禁止されている行為をすること

 

さらに、マイカー通勤中に起こした事故について会社は責任を負わない旨や駐車場におけるマイカー同士の事故や盗難についても責任を負わない旨も規定するとよいでしょう。

決算月の決め方

これから法人を開業する予定の方や個人事業から法人へ、いわゆる法人成りをお考えの方は、決算月をいつにするか決めなければいけません。

決算月をいつにするかについては、特に決まりはないので自由に決めることが出来ます。ただし、12ヶ月を超える事業年度は認められていません。

上場企業は3月決算が多いですが、あくまでもそれぞれの会社が自由に決めれることになっています。

 

では、決算月はいつにしたらよいのでしょうか?

決算のときは、棚卸しの計算をしたり、通常の月に比べて余分な作業や業務が増えます。税理士との打ち合わせなどもいつもの月よりも増える可能性があることからも、比較的忙しくない時期に決算月を設定するのが望ましいでしょう。お盆休みや正月休みなど、稼働日数が減る月も避けたほうがよいでしょう。

また、会社の繁忙期は、売上が大きく上がる時期でもあります。反面、予想を大きく下回ることも考えられます。この時期を決算月としてしまうと利益の予測も立てにくいので、やはり繁忙期は避けたほうがよいでしょう。

さらに、他にも会社を経営しているような場合には、そちらとの関係も考慮に入れて決算月を決めていきましょう。

 

つぎに、消費税の免税点の観点から考えてみましょう。

消費税の免税期間がなるべく長くなるように決算月を決定するという考え方があります。

資本金が1,000万円未満の法人を設立した場合、設立第1期目は消費税の免税事業者となることができます。設立2期目は要件を満たせば免税事業者となることができます。

その設立2期目の要件は、

設立1期目の事業年度開始の日から6ヶ月間(特定期間といいます)の課税売上高が1,000万円を超えていた場合は免税事業者ではなく課税事業者となります。なお、特定期間中に支払った給与等の支払いが1,000万円を超えているかどうかにより判定することも出来ます。

例えば、特定期間中の課税売上高が1,000万円を超えていても、特定期間中の給与等の支払い額が1,000万円を超えていなければ、結果として、免税事業者と判定することができます。

さらに、設立1期目が7ヶ月以下の場合については、特定期間に該当しないものとされ、設立2期目も免税事業者となります。

特定期間に売上高が1,000万円を超えたり、給与等の支払いも1,000万円を超えることが予想される規模の会社を設立する場合、設立1期目を7ヶ月以下にすることによって、消費税の免税点制度を活用できる期間を増やすことができます。

それだけの規模にはならないのであれば、設立1期目も12ヶ月に近い期間にすると消費税の免税点制度を有効に活用することができます。

※上記はあくまでも資本金が1,000万円未満の法人の場合です。