通勤災害の範囲

労災保険の適用にあたって、これは通勤災害に該当するのか?という問題が生じることがあります。

まず、通勤とは、労働者が就業に関して、下記に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいいます。

  1. 住居と会社との間の往復
  2. 兼業している人は、最初の会社から他の次の会社への移動
  3. 赴任先住居から帰省先住居間の移動

この移動が、業務に就くため、または業務を終了したことにより行われる必要があります。

例えば、次のようなものは業務との関連性が認められます。

  • 寝過してしまって遅刻した場合
  • ラッシュを避けるために早出した場合
  • 時間的に若干の前後があった場合
  • 昼休み等終業の時間の間に相当の間隔があるため帰宅する場合

 

逆に次のような場合は業務関連性が認められません。

  • 運動部の練習に参加する等の目的で、午後の遅番の出勤者である者が朝から住居を出るなど、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合
  • ハローワーク等でその日の紹介を受けるために住居からハローワークまで行く行為

 

また、通勤の途中で、仕事とは関係のない目的で通勤経路をそれたり(逸脱)、通勤の途中で通勤とは関係のない行為を行ったり(中断)すると、逸脱・中断中もそれ以後も原則として通勤と認められないため、通勤災害の認定において問題になるケースもあります。

ただし、下記のような些細な行為については、逸脱・中断とはされません。

  • 経路の近くにあるトイレを使用する場合
  • 駅の売店などで飲み物などを購入する場合

 

これに加えて、逸脱・中断が日常生活上必要な行為であって、やむを得ない事由により行う最小限度のものである場合については、合理的な経路に復した後は、例外的に通勤と認められています。

例えば、次のような行為となります。

  • 日用品の購入のためにスーパーに立ち寄る
  • 出退勤の途中で美容院に立ち寄る
  • 職業訓練・教育訓練を受ける行為
  • 選挙権の行使
  • 病院で診察・治療を受けること
  • 柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の施術を受けること
  • 要介護状態の配偶者・子・父母,
  • 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、並びに同居しかつ扶養している、孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的または反復的に行われるものに限る)

 

事業主の方からすると、もしもの事故のときは労災の保険給付で賄いたいと考えていると思います。

では、事故の可能性が高いと思われるマイカー通勤を許可している事業所の場合について考えてみます。

 

マイカー通勤中の事故で会社が責任を負う可能性は100%ないとは限らないので、下記の点に注意が必要です。

  • 任意保険に加入しているかどうかを必ず確認する。
  • マイカー通勤許可申請書等を作成するなどして、確実に確認する。(運転免許証・保険証券のコピーの添付をしてもらいましょう)
  • 通勤経路申告書を作成してもらい、通勤経路を把握する。

 

また、マイカー通勤規定の作成も有効です。

マイカー通勤規定の中で、例えば「許可の条件」を次のように設定するとよいでしょう。

  • 運転経験○年以上(例えば2年以上)
  • 身体および精神に異常または欠陥がない者
  • 自賠責のほか、任意保険(対人:無制限、対物:無制限)に加入している者
  • 通勤のための公共交通機関がないこと、または極めて不便であること

 

また「禁止事項」として、次のような定めをしておくとよいと思います。

  • マイカーを業務に使用すること
  • 拘束時間中に私用でマイカーを使用すること
  • マイカーに文字・ステッカー等を用いて、社用車と見られるような表示をすること
  • 飲酒や過度の疲労等、安全運転が困難と予想される状態で運転すること
  • 整備不良の車両を使用すること
  • その他、道路交通法令により禁止されている行為をすること

 

さらに、マイカー通勤中に起こした事故について会社は責任を負わない旨や駐車場におけるマイカー同士の事故や盗難についても責任を負わない旨も規定するとよいでしょう。