国民年金の強制徴収の対象者拡大

国民年金保険料の納付は、国民の義務となっており、保険料を納付しない方に対しては強制徴収という制度がとられることになっています。

サラリーマンの方などは、厚生年金保険料を会社のお給料から天引きされるので未納ということはほぼ考えられないのですが、国民年金保険料の場合は、自営業の方などとなるためこのような天引きということも行えないことから、どうしても未納ということも起きてしまいます。

 

国民年金保険料は、納付が経済的に難しときは保険料免除納付猶予という制度もあります。

保険料免除や納付猶予になった期間は、年金の受給資格期間(25年間)に算入されます。年金は、せっかく納付していた期間があってもこの受給資格期間、現在は25年間の納付がない場合は受給できないことになっています。また、年金額を計算する場合も、保険料を納めていない免除期間であっても、保険料を納めた時の2分1(平成21年3月までの免除期間は3分の1)は年金の支給額に反映されます。(納付猶予になった期間は年金額には反映されません。)どうしてもというときは、未納のままにしておかないで、必ず免除や納付猶予の手続きをするようにしましょう。

 

所得が一定以上ある方に対しては、保険料免除や納付猶予ということにはならないので、国民年金保険料の未納が続くと最終的には強制徴収ということになってきます。強制徴収と言っても滞納していた人すべてが強制徴収の対象となるのではなく、「十分な保険料負担能力があり、度重なる納付督励を行ったにもかかわらず、保険料の納付がない場合」に、強制徴収で財産差押えということになります。

 

現在は、「所得350万円以上」で、「未納月数が7か月以上」の人に対して、この強制徴収が行われることになっています。

 

直近の国民年金の納付率をみてみると、平成28年4月~9月までの納付率が平成28年10月末時点で59.1%となっており、前年度と比べると2.4ポイント増加していますが、まだまだ納付率が高いとはいえない状況となっています。

 

このような状況もあり、公的年金の公平性という観点から、日本年金機構は新年度から強制徴収の対象者を「所得300万円以上」で「未納月数13カ月以上」に変更すると発表しました。

未納月数は7カ月から13カ月以上に伸びますが、強制徴収の対象者は増加し、現在の強制徴収の対象者27万人が約9万人増加して36万人程度になる見通しとなっています。

 

強制徴収の流れとしては

  1. 滞納が続いている人に文書や電話、個別訪問などで納付を要請
  2. 要請に応じなければ「催告状」を送付
  3. 日本年金機構は、国税徴収法に則り、市町村から情報を得るなどして所得を確認し、強制徴収の対象者に「特別催告状」を送付
  4. 最終催告状送付後、指定期限までに納付されないものに対しては「督促状」が送付
  5. 督促状の指定期限までに納付されない場合は、滞納処分が開始され、延滞金が課せられる
  6. 預貯金の残高などの財産調査が行われる
  7. 「差押予告」を送付
  8. 強制執行によって財産の差し押さえが行われる

 

もし、本人が納付できない場合、滞納者本人の財産だけでなく、滞納者の世帯主や配偶者といった連帯納付義務者である親族の財産まで差押えが及ぶこともあるので注意が必要です。