税務労務お役立ちコラム

大阪の女性税理士・社会保険労務士 阿部ミチルのお役立ちコラム

代表税理士・社会保険労務士 阿部ミチル

大阪の女性税理士・社会保険労務士のお役立ちコラム

通勤災害の範囲

労災保険の適用にあたって、これは通勤災害に該当するのか?という問題が生じることがあります。

まず、通勤とは、労働者が就業に関して、下記に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいいます。

  1. 住居と会社との間の往復
  2. 兼業している人は、最初の会社から他の次の会社への移動
  3. 赴任先住居から帰省先住居間の移動

この移動が、業務に就くため、または業務を終了したことにより行われる必要があります。

例えば、次のようなものは業務との関連性が認められます。

  • 寝過してしまって遅刻した場合
  • ラッシュを避けるために早出した場合
  • 時間的に若干の前後があった場合
  • 昼休み等終業の時間の間に相当の間隔があるため帰宅する場合

 

逆に次のような場合は業務関連性が認められません。

  • 運動部の練習に参加する等の目的で、午後の遅番の出勤者である者が朝から住居を出るなど、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合
  • ハローワーク等でその日の紹介を受けるために住居からハローワークまで行く行為

 

また、通勤の途中で、仕事とは関係のない目的で通勤経路をそれたり(逸脱)、通勤の途中で通勤とは関係のない行為を行ったり(中断)すると、逸脱・中断中もそれ以後も原則として通勤と認められないため、通勤災害の認定において問題になるケースもあります。

ただし、下記のような些細な行為については、逸脱・中断とはされません。

  • 経路の近くにあるトイレを使用する場合
  • 駅の売店などで飲み物などを購入する場合

 

これに加えて、逸脱・中断が日常生活上必要な行為であって、やむを得ない事由により行う最小限度のものである場合については、合理的な経路に復した後は、例外的に通勤と認められています。

例えば、次のような行為となります。

  • 日用品の購入のためにスーパーに立ち寄る
  • 出退勤の途中で美容院に立ち寄る
  • 職業訓練・教育訓練を受ける行為
  • 選挙権の行使
  • 病院で診察・治療を受けること
  • 柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の施術を受けること
  • 要介護状態の配偶者・子・父母,
  • 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、並びに同居しかつ扶養している、孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的または反復的に行われるものに限る)

 

事業主の方からすると、もしもの事故のときは労災の保険給付で賄いたいと考えていると思います。

では、事故の可能性が高いと思われるマイカー通勤を許可している事業所の場合について考えてみます。

 

マイカー通勤中の事故で会社が責任を負う可能性は100%ないとは限らないので、下記の点に注意が必要です。

  • 任意保険に加入しているかどうかを必ず確認する。
  • マイカー通勤許可申請書等を作成するなどして、確実に確認する。(運転免許証・保険証券のコピーの添付をしてもらいましょう)
  • 通勤経路申告書を作成してもらい、通勤経路を把握する。

 

また、マイカー通勤規定の作成も有効です。

マイカー通勤規定の中で、例えば「許可の条件」を次のように設定するとよいでしょう。

  • 運転経験○年以上(例えば2年以上)
  • 身体および精神に異常または欠陥がない者
  • 自賠責のほか、任意保険(対人:無制限、対物:無制限)に加入している者
  • 通勤のための公共交通機関がないこと、または極めて不便であること

 

また「禁止事項」として、次のような定めをしておくとよいと思います。

  • マイカーを業務に使用すること
  • 拘束時間中に私用でマイカーを使用すること
  • マイカーに文字・ステッカー等を用いて、社用車と見られるような表示をすること
  • 飲酒や過度の疲労等、安全運転が困難と予想される状態で運転すること
  • 整備不良の車両を使用すること
  • その他、道路交通法令により禁止されている行為をすること

 

さらに、マイカー通勤中に起こした事故について会社は責任を負わない旨や駐車場におけるマイカー同士の事故や盗難についても責任を負わない旨も規定するとよいでしょう。

決算月の決め方

これから法人を開業する予定の方や個人事業から法人へ、いわゆる法人成りをお考えの方は、決算月をいつにするか決めなければいけません。

決算月をいつにするかについては、特に決まりはないので自由に決めることが出来ます。ただし、12ヶ月を超える事業年度は認められていません。

上場企業は3月決算が多いですが、あくまでもそれぞれの会社が自由に決めれることになっています。

 

では、決算月はいつにしたらよいのでしょうか?

決算のときは、棚卸しの計算をしたり、通常の月に比べて余分な作業や業務が増えます。税理士との打ち合わせなどもいつもの月よりも増える可能性があることからも、比較的忙しくない時期に決算月を設定するのが望ましいでしょう。お盆休みや正月休みなど、稼働日数が減る月も避けたほうがよいでしょう。

また、会社の繁忙期は、売上が大きく上がる時期でもあります。反面、予想を大きく下回ることも考えられます。この時期を決算月としてしまうと利益の予測も立てにくいので、やはり繁忙期は避けたほうがよいでしょう。

さらに、他にも会社を経営しているような場合には、そちらとの関係も考慮に入れて決算月を決めていきましょう。

 

つぎに、消費税の免税点の観点から考えてみましょう。

消費税の免税期間がなるべく長くなるように決算月を決定するという考え方があります。

資本金が1,000万円未満の法人を設立した場合、設立第1期目は消費税の免税事業者となることができます。設立2期目は要件を満たせば免税事業者となることができます。

その設立2期目の要件は、

設立1期目の事業年度開始の日から6ヶ月間(特定期間といいます)の課税売上高が1,000万円を超えていた場合は免税事業者ではなく課税事業者となります。なお、特定期間中に支払った給与等の支払いが1,000万円を超えているかどうかにより判定することも出来ます。

例えば、特定期間中の課税売上高が1,000万円を超えていても、特定期間中の給与等の支払い額が1,000万円を超えていなければ、結果として、免税事業者と判定することができます。

さらに、設立1期目が7ヶ月以下の場合については、特定期間に該当しないものとされ、設立2期目も免税事業者となります。

特定期間に売上高が1,000万円を超えたり、給与等の支払いも1,000万円を超えることが予想される規模の会社を設立する場合、設立1期目を7ヶ月以下にすることによって、消費税の免税点制度を活用できる期間を増やすことができます。

それだけの規模にはならないのであれば、設立1期目も12ヶ月に近い期間にすると消費税の免税点制度を有効に活用することができます。

※上記はあくまでも資本金が1,000万円未満の法人の場合です。

 

 

 

雇用契約書の作成は必要でしょうか?

従業員を採用する際に作成することが考えられる書類として、「雇用契約書」と「労働条件通知書」があります。では、この二つの書類はどのような違いがあるのでしょうか?

「雇用契約書」は労使双方が署名や押印をして労働条件について契約を締結(合意)するものであるのに対して、「労働条件通知書」は使用者側が労働者に対して一方的に通知するものであるという違いがあります。

 

まず、「労働条件通知書」についてですが、こちらは労働基準法15条を根拠法としています。

(労働基準法15条)

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

つまり、「労働条件通知書」は作成義務があるということになります。

 

一方、「雇用契約書」は労働契約法4条2項を根拠としています。

(労働契約法4条2項)

労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

 

条文を読む限り、「できる限り書面により」となっているだけで「雇用契約書」の作成は任意ということになります。

 

では、従業員を採用する際、「雇用契約書」は作成する必要はないのでしょうか?

「雇用契約書」は労使間のトラブルを防止する観点から雇用契約書は作成することをお勧めします。実際に、契約内容の行き違いでトラブルになるケースが増えてきています。このようなトラブルは従業員が退職する際に起こることが多くなっていますが、「言った」「言ってない」という論争を防ぐためにも従業員を採用したときは「雇用契約書」は作成するようにしましょう。

 

前述した通り、「労働条件通知書」は必ず作成しなければならないので、

  1. 「労働条件通知書」と「雇用契約書」をそれぞれ別々に作成する
  2. 「雇用契約書」のなかに「労働条件通知書」の必須記載事項を入れて作成する(雇用契約書兼労働条件通知書)

というパターンが考えられます。

1の場合は、二つの書類を作成しなければならない手間はありますが、本来は違う目的の書類なのではっきり分けることができるというメリットがあります。2の場合は、一つにまとめて作成するので管理もラクですが、雇用契約書の記載事項に含まれないことが労働条件通知書には含まれている部分があるので、合意が必要ない部分についても契約の締結が必要になるというデメリットがあります。

 

それぞれのメリット・デメリットや違いを考えて作成してみてください。