大阪の女性税理士・社会保険労務士 阿部ミチルのお役立ちコラム

労災保険の適用にあたって、これは通勤災害に該当するのか?という問題が生じることがあります。
まず、通勤とは、労働者が就業に関して、下記に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいいます。
この移動が、業務に就くため、または業務を終了したことにより行われる必要があります。
例えば、次のようなものは業務との関連性が認められます。
逆に次のような場合は業務関連性が認められません。
また、通勤の途中で、仕事とは関係のない目的で通勤経路をそれたり(逸脱)、通勤の途中で通勤とは関係のない行為を行ったり(中断)すると、逸脱・中断中もそれ以後も原則として通勤と認められないため、通勤災害の認定において問題になるケースもあります。
ただし、下記のような些細な行為については、逸脱・中断とはされません。
これに加えて、逸脱・中断が日常生活上必要な行為であって、やむを得ない事由により行う最小限度のものである場合については、合理的な経路に復した後は、例外的に通勤と認められています。
例えば、次のような行為となります。
事業主の方からすると、もしもの事故のときは労災の保険給付で賄いたいと考えていると思います。
では、事故の可能性が高いと思われるマイカー通勤を許可している事業所の場合について考えてみます。
マイカー通勤中の事故で会社が責任を負う可能性は100%ないとは限らないので、下記の点に注意が必要です。
また、マイカー通勤規定の作成も有効です。
マイカー通勤規定の中で、例えば「許可の条件」を次のように設定するとよいでしょう。
また「禁止事項」として、次のような定めをしておくとよいと思います。
さらに、マイカー通勤中に起こした事故について会社は責任を負わない旨や駐車場におけるマイカー同士の事故や盗難についても責任を負わない旨も規定するとよいでしょう。
これから法人を開業する予定の方や個人事業から法人へ、いわゆる法人成りをお考えの方は、決算月をいつにするか決めなければいけません。
決算月をいつにするかについては、特に決まりはないので自由に決めることが出来ます。ただし、12ヶ月を超える事業年度は認められていません。
上場企業は3月決算が多いですが、あくまでもそれぞれの会社が自由に決めれることになっています。
決算のときは、棚卸しの計算をしたり、通常の月に比べて余分な作業や業務が増えます。税理士との打ち合わせなどもいつもの月よりも増える可能性があることからも、比較的忙しくない時期に決算月を設定するのが望ましいでしょう。お盆休みや正月休みなど、稼働日数が減る月も避けたほうがよいでしょう。
また、会社の繁忙期は、売上が大きく上がる時期でもあります。反面、予想を大きく下回ることも考えられます。この時期を決算月としてしまうと利益の予測も立てにくいので、やはり繁忙期は避けたほうがよいでしょう。
さらに、他にも会社を経営しているような場合には、そちらとの関係も考慮に入れて決算月を決めていきましょう。
つぎに、消費税の免税点の観点から考えてみましょう。
消費税の免税期間がなるべく長くなるように決算月を決定するという考え方があります。
資本金が1,000万円未満の法人を設立した場合、設立第1期目は消費税の免税事業者となることができます。設立2期目は要件を満たせば免税事業者となることができます。
その設立2期目の要件は、
設立1期目の事業年度開始の日から6ヶ月間(特定期間といいます)の課税売上高が1,000万円を超えていた場合は免税事業者ではなく課税事業者となります。なお、特定期間中に支払った給与等の支払いが1,000万円を超えているかどうかにより判定することも出来ます。
例えば、特定期間中の課税売上高が1,000万円を超えていても、特定期間中の給与等の支払い額が1,000万円を超えていなければ、結果として、免税事業者と判定することができます。
さらに、設立1期目が7ヶ月以下の場合については、特定期間に該当しないものとされ、設立2期目も免税事業者となります。
特定期間に売上高が1,000万円を超えたり、給与等の支払いも1,000万円を超えることが予想される規模の会社を設立する場合、設立1期目を7ヶ月以下にすることによって、消費税の免税点制度を活用できる期間を増やすことができます。
それだけの規模にはならないのであれば、設立1期目も12ヶ月に近い期間にすると消費税の免税点制度を有効に活用することができます。
※上記はあくまでも資本金が1,000万円未満の法人の場合です。
「雇用契約書」は労使双方が署名や押印をして労働条件について契約を締結(合意)するものであるのに対して、「労働条件通知書」は使用者側が労働者に対して一方的に通知するものであるという違いがあります。
まず、「労働条件通知書」についてですが、こちらは労働基準法15条を根拠法としています。
(労働基準法15条)
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
つまり、「労働条件通知書」は作成義務があるということになります。
一方、「雇用契約書」は労働契約法4条2項を根拠としています。
(労働契約法4条2項)
労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
条文を読む限り、「できる限り書面により」となっているだけで「雇用契約書」の作成は任意ということになります。
では、従業員を採用する際、「雇用契約書」は作成する必要はないのでしょうか?
「雇用契約書」は労使間のトラブルを防止する観点から雇用契約書は作成することをお勧めします。実際に、契約内容の行き違いでトラブルになるケースが増えてきています。このようなトラブルは従業員が退職する際に起こることが多くなっていますが、「言った」「言ってない」という論争を防ぐためにも従業員を採用したときは「雇用契約書」は作成するようにしましょう。
前述した通り、「労働条件通知書」は必ず作成しなければならないので、
というパターンが考えられます。
1の場合は、二つの書類を作成しなければならない手間はありますが、本来は違う目的の書類なのではっきり分けることができるというメリットがあります。2の場合は、一つにまとめて作成するので管理もラクですが、雇用契約書の記載事項に含まれないことが労働条件通知書には含まれている部分があるので、合意が必要ない部分についても契約の締結が必要になるというデメリットがあります。
それぞれのメリット・デメリットや違いを考えて作成してみてください。