大阪の女性税理士・社会保険労務士 阿部ミチルのお役立ちコラム
![代表税理士・社会保険労務士 阿部ミチル](https://www.osaka-tax.jp/wp/wp-content/uploads/hpb-media/img/michiruabe30.png)
今回の9月4日の台風では、想定外の甚大な被害となり、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。リフォーム会社の方は休日返上で対応に追われているとお聞きしています。1日も早く通常の生活に戻る日が来るようお祈り申し上げます。
今回の台風は前日からJRが運休するという情報もあり、前日から臨時休業にすると決めていた会社も多くあったかと思います。また、直近では北海道で起きた地震でも、停電の影響もあり臨時休業にした会社は多かったと思います。このような場合の休業日の給与の取扱いはどうなるでしょうか?
労働基準法第26条には、以下のように書かれています。
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。(傍線筆者)
この条文では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合」とあります。「使用者の責めに帰すべき事由」は広範に定められており、例えば事業業績悪化に伴う生産調整のための休日や取引先の倒産による休日など直接事業者の責任ではないものも含まれます。
自然災害による休業の場合は、こういった使用者の責に帰すべき事由には当てはまらないため、休業手当の支払義務はないと考えられます。
では、さらに詳しく解説していきます。
自然災害により始業時刻前に全日休業とした場合は、使用者の責に帰すべき事由には該当せず、かつ、使用者の経営管理上の責任とも考えられないため、給与の支払い義務は生じないものと考えて結構です。
今回の9月4日の台風では、午前中だけ仕事という方もいらっしゃったかと思います。このように就業時間中に従業員を早退させる場合には一応使用者責任の範囲外とみなされます。ただし、単に雨が降っているから早退させるというのでは合理的な理由に欠けるため、暴風警報や大雨警報の発令など客観的な裏付けが必要なので慎重な判断が求められます。
このように1日のうちの一部を休業とした場合の取扱いについては、現実に就労した時間に対し支払われる賃金が平均賃金の100分の60に満たない場合には、その差額を支払う義務が生じます。
例えば、平均賃金が1万円の従業員の場合、休業手当は6,000円(10,000円×60%)となります。
1日のうち一部休業した場合、現実に就労した分の賃金が5,000円である場合は6,000円-5,000円=1,000円となり、休業手当として1,000円を支払うことになります。現実に就労した分の賃金が8,000円であった場合には、8,000円>6,000円となるため、休業手当を支払わなくてもよいことになります。
有給休暇は労働の義務があることを前提としているため、台風のために「休日」とされていた場合はそもそも労働の義務はなく、従業員は有給休暇を取得できないと考えられます。したがって、従業員が事後的に有給休暇にしてほしいと言ってきたとしても、それを認める義務は会社側にはありません。
台風で臨時休業になった日と事前に申請していた有給休暇の日が被った場合は、予知して申請されたわけではないので会社は有給休暇を認めなくてはいけません。
また、就業規則で、自然災害の際の特別休暇について定めていた場合は、それに従うことになります。会社側が恩恵的に有給休暇としてあげる分には全く問題はありません。
訪日外国人観光客が増加していますが、そんな中、宿泊施設の不足を補うために民泊が急増しています。一定のルールを定めて、健全なサービスの普及を図るために住宅宿泊事業法(民泊新法)が平成30年6月15日に施行されました。
この民泊新法では、旅館業法で禁止する住宅専門地域での宿泊サービスを認可する一方で、1年間の営業日数を180日までと定めています。
民泊新法では、3種類の事業者を定めています。それぞれの事業者について、届出や登録を義務付けて、これらの事業者が適正な業務を運営することによって、観光客の多様な宿泊ニーズに的確に対応し、観光客の来訪・滞在を促進することが期待されています。
(役割)
民泊サービスを営む者(物件のオーナー)
(義務の内容)
・宿泊者の衛生や安全管理
・宿泊者名簿の備付け
・騒音の防止・ごみ処理等に関する説明
・苦情等への対応等
・市町村に則したガイドラインに基づいた適用をすること
(届出及び申請先)
都道府県知事等
(役割)
住宅宿泊事業者の委託に基づき、住宅の維持保全に関する業務を行う者(民泊運営代行会社)
(義務の内容)
・業務処理の原則・公正誠実義務
・再委託の禁止
・住宅宿泊事業者への定期報告
(届出及び申請先)
国土交通大臣
(役割)
宿泊者と住宅宿泊事業者との間の宿泊契約の締結の仲介事業を行う者(民泊仲介サイト)
(義務の内容)
・業務処理の原則・公正誠実義務
・名義貸し・不当な勧誘等・あっせん等の禁止
・住宅民泊仲介業約款の作成及び届出
・住宅宿泊仲介業務に関する料金の公示等
(届出及び申請先)
観光庁長官
民泊は一般の家庭が主体となることが想定されます。では、一般の家庭が民泊を行って得た所得の申告はどうすればいいのでしょうか?
民泊によって得た所得は、原則として雑所得になります。ただし、専ら民泊によって生じる所得によって生計を立てている場合など、民泊が所得税法上の事業として行われることが明らかな場合には事業所得となります。
必要経費にできるものとしては、民泊を行うために支払う仲介手数料などとなり、水道光熱費や固定資産税など事業用とプライベートの部分の費用の両方が含まれている場合には、例えば民泊に利用している部分の床面積の総床面積に占める割合や実際に宿泊客を宿泊させた日数をもとに案分するなど、業務の内容や資産の利用状況などを総合的に勘案して判断することになります。
居住している自宅を利用して民泊を行う場合、床面積の2分の1以上に相当する部分を専ら自己の居住の用に供しているなどの要件を満たせば、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。
居住用家屋を利用して民泊を行っていて、この家屋を譲渡した場合には、居住用に供している部分に限って、居住用財産の3,000万円の特別控除の適用対象となります。
民泊で宿泊者から受け取る宿泊料は、ホテルや旅館などと同様に消費税の課税対象となります。当課税期間の基準期間(2年前)における課税売上高が1,000万円以下の場合には、当課税期間は免税事業者に該当するため、消費税の申告・納税義務はありません。
民泊による所得もきちんと申告するようにしてください。
建物の賃貸借契約をする場合、建物だけ利用するということは考えにくく、その敷地である土地も併せて賃貸借すると考えられますが、この場合の建物の賃貸借契約書については印紙税の課税文書ではないため、印紙は不要となっています。
土地そのものの賃貸借契約の場合、印紙税の課税文書に該当してきます。土地そのものの賃貸借契約なので、駐車場やビニールハウスなどは施設の利用に該当し建物の賃貸借契約書と同様に印紙は不要となっています。
土地の賃貸借契約書は、印紙税額の一覧表の第1号の2文書(地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書)に該当してきます。印紙税の金額を判定する場合の「記載された契約金額」は、土地の賃貸料は含まれず、権利金その他名称を問わず後日返還されないものをいうので、後日返還される予定の保証金や敷金は記載金額には含まれません。
したがって、賃貸料と後日返還予定の敷金のみの記載しかない土地の賃貸借契約書は、「契約金額の記載のないもの」に該当し印紙税は200円になります。