税務労務お役立ちコラム

大阪の女性税理士・社会保険労務士 阿部ミチルのお役立ちコラム

代表税理士・社会保険労務士 阿部ミチル

大阪の女性税理士・社会保険労務士のお役立ちコラム

生産性を向上させると助成金額が増えます(生産性要件)

わが国では、今後労働力人口の減少が見込まれる中で経済成長を図っていくためには、労働生産性を高めていくことが不可欠です。このため、国は事業所における生産性向上の取組みを支援するため、生産性を向上させた事業所が労働関係助成金(一部)を利用する場合、その助成額又は助成率の割増等を行っています。法人だけでなく個人事業主も対象となっています。

「生産性要件」って何?

助成金の支給申請書を労働局に提出する時点で、「直近の決算書」と「3年前の決算書」から計算した「付加価値」を各決算月の末日時点の「雇用保険の被保険者数」で割った数値を生産性といいます。

・生産性要件は、その3年度前に比べて生産性が6%以上伸びていること 

・「生産性」の伸びが1%以上6%未満の場合、金融機関から一定の「事業性評価」を得ること

(この場合は、借入金(なければ口座)のある金融機関から「与信取引等に関する情報提供に係る承諾書」に捺印をもらって労働局に提出する必要があります。)

※「付加価値」=営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃貸料+租税公課

人数がもともと少ない会社だと、3年前に比べて利益が出ていても雇用保険に加入要件のないパートさんなどの人数に左右されてしまうこともありますが、要件を満たした場合は、ちょっと面倒に感じるかもしれませんが助成金額の20%増額されるものもあり、メリットが大きいので検討する余地は大いにあります。

 

「生産性要件」の設定をしている助成金

  • (再就職支援関係)
    • 労働移動支援助成金
      早期雇入れ支援コース、中途採用拡大コース
  • (雇入れ関係)
    • 地域雇用開発助成金
      地域雇用開発コース
  • (起業支援関係)
    • 生涯現役起業支援助成金
  • (雇用環境の整備関係)
    • 人材確保等支援助成金
      雇用管理制度助成コース、介護福祉機器助成コース、介護・保育労働者雇用管理制度助成コース、人事評価改善等助成コース、設備改善等支援コース、雇用管理制度助成コース(建設分野)、若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)、作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
    • 65歳超雇用推進助成金
      高年齢者雇用環境整備支援コース、高年齢者無期雇用転換コース
    • キャリアアップ助成金
      正社員化コース、賃金規定等改定コース、健康診断制度コース、賃金規定等共通化コース、諸手当制度共通化コース、選択的適用拡大導入時処遇改善コース、短時間労働者労働時間延長コース
  • (仕事と家庭の両立支援関係)
    • 両立支援等助成金
      出生時両立支援コース、介護離職防止支援コース、育児休業等支援コース、再雇用者評価処遇コース、女性活躍加速化コース
  • (人材開発関係)
    • 人材開発支援助成金
      特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース、建設労働者認定訓練コース、建設労働者技能実習コース
  • (最低賃金引き上げ関係)
    • 業務改善助成金

対象にならない場合

1)開業してから期間が経っておらず、3年前の決算書がない場合

2)3年前の決算月の末日時点で雇用保険の被保険者がいない場合

3)3年前の決算期の初日から助成金の支給申請をする日までの間に会社都合による退職がある場合

 

「生産性要件」の計算式

生産性=付加価値/雇用保険被保険者数

再度「付加価値」について確認していきます。

「付加価値」=営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃貸料+租税公課

これら付加価値の対象となるものとして、通勤費などの諸手当があります。しかし、通勤費を旅費交通費に含めているような場合は対象になりません。あくまでも、どの勘定科目で処理していたかで判断されてしまします。勘定科目ありきなので、生産性要件の適用を考える場合は勘定科目をきちんと考えて会計処理すると有利になります。

長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果:約7割の事業場が法令違反

厚生労働省では、「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果(平成29年度)」を平成30年8月7日に公表しています。これは、平成29年度に、長時間労働が疑われる25,676事業場に対して実施された労働基準監督署による監督指導の結果を取りまとめたものです。

この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働数が1カ月当たり、80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としています。

平成29年度は、監督指導を実施した事業場のうち70.3%の事業場で労働基準法などの法令違反が認められました。平成28年度の66.0%よりも、その割合が増加しています。

 

【平成29年4月から平成30年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場:25,676事業場
このうち、18,061事業場(全体の70.3%)で労働基準関係法令違反あり。

(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
① 違法な時間外労働があったもの:11,592事業場(45.1%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:        8,592事業場(74.1%)
うち、月100時間を超えるもの:     5,960事業場(51.4%)
うち、月150時間を超えるもの:       1,355事業場(11.7%)
うち、月200時間を超えるもの:     264事業場( 2.3%)
② 賃金不払残業があったもの:1,868事業場(7.3%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:         1,102事業場(59.0%)
③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:2,773事業場(10.8%)

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
① 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,986事業場(81.7%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:      13,658事業場(65.1%)
② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,499事業場(17.5%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:       1,878事業場(41.7%)

※ 脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があるため。

(厚生労働省ホームページより)

なお、この公表に当たって、監督指導事例も紹介されています。いくつかピックアップすると、

◎36協定を締結・届出することなく、全労働者の約3分の1に当たる労働者28名について、月100時間を超える違法な時間外・休日労働(最長:月224時間)を行わせていた。

◎法定の休憩時間を与えていなかった。

◎健康診断において異常の所見があった者に係る医師の意見聴取を行っていなかった。

◎常時50人以上の労働者を使用しているにもかかわらず、1年以内ごとに1回のストレスチェックを実施していなかった。

平成31年(2019年)4月から、働き方改革関連法による労働基準法や労働安全衛生法の改正も実施され、より一層の法令遵守が求められることになります。

ご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

外国人の社員(居住者)の配偶者控除・扶養控除について

昨今人手不足なこともあり、外国人の方を雇っているという会社も多くなっていると思います。そんな日本に住む外国人社員(居住者といいます。)が配偶者や子供などが日本に住んでおらず海外に住んでいる場合でも、日本の配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・障害者控除(以下、扶養控除等)は適用になるでしょうか?

海外に住んでいる方を非居住者といいますが、もっと厳密に定義を確認すると、『国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上の居所を有する個人以外の者』とされています。分かりにくい言い回しですが、まさに日本で働く外国人の方の親族で海外に暮らすことが日常となっている方が当てはまります。ちなみに日本人の方のお子様が1年以上の海外留学をしているような場合も当てはまってきます。

結論から先に言うと、このような非居住者でも、扶養控除等の適用を受けることができます。

では、その適用を受けるにあたって何か書類は必要になるでしょうか?

平成28年度の扶養控除等申告書から「非居住者である親族」という欄が増えました。

非居住者である親族がいる方が、所得税または住民税の扶養控除を適用する場合には、①「親族関係書類」と ②「送金関係書類」の二つを会社に提出する必要があります。

 

「親族関係書類」とは?

まず、「親族関係書類」とは、次の①又は②のいずれかの書類で、国外居住親族が居住者の親族であることを証するものをいいます。

① 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し(コピーでOK)

② 外国政府又は外国の地方公共団体(以下「外国政府等」といいます。)が発行した書類(原本の提出又は提示が必要)

(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)

例)戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書

外国政府等が発行した書類について、一つの書類に国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の全てが記載されていない場合には、複数の書類を組み合わせることにより氏名、生年月日及び住所又は居所を明らかにする必要があります。

また、16 歳未満の非居住者である扶養親族(扶養控除の対象とならない扶養親族)であっても障害者控除を受ける場合には、親族関係書類及び送金関係書類の提出又は提示が必要です。さらに、16歳未満の扶養親族を有する者で、個人住民税の非課税限度額制度(人的非課税制度)の適用を受ける者も含みます。

なお、親族関係書類は、扶養控除等申告書の提出時に会社に提示する必要があるため、その年の最初に給与が支給される日までには確認が必要となります。確認が出来なかった場合は、扶養のカウントはせずに給与計算を行うことになります。

「送金関係書類」とは?

次に「送金関係書類」は、仕送りしている事実を確認できる書類です。(コピーでOK)

なお、居住者が、国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払いを、その年に同一の国外居住の親族に3回以上行った場合の送金関係書類の提出又は提示については、その年の全ての送金関係書類の提出又は提示に代えて、次に掲げる①~⑤の事項を記載した明細書の提出及び各国外居住の親族のその年の最初と最後の支払いに係る送金関係書類の提出又は提示として差し支えないこととされています。(所得税基本通達120-9)

1居住者の氏名及び住所

2 支払を受けた国外居住親族の氏名

3 支払日

4 支払方法

5 支払額

 

「親族関係書類」、「送金関係書類」のいずれについても日本語への翻訳文が必要な点は注意が必要です。誰が翻訳するかの制限はありません。