大阪の女性税理士・社会保険労務士 阿部ミチルのお役立ちコラム
![代表税理士・社会保険労務士 阿部ミチル](https://www.osaka-tax.jp/wp/wp-content/uploads/hpb-media/img/michiruabe30.png)
決算賞与は、業績が好調な時に支払われることが多いため、節税対策として用いられることがあります。
この決算賞与は、未払いでも通常の賞与と同様で損金にすることができますが、その場合は以下の3つの要件を満たす必要があるので注意が必要です。
上記の要件を満たすことによって、有効な決算対策をすることができます。
1についてはいくつか注意点があります。
決算賞与の通知を受けた従業員が、実際の決算賞与の支給日までに退職した場合には支給しないことを会社側が決めていたり、実際に支給をしなかった場合には、全員分の決算賞与を今期の経費として計上できなくなります。
また、決算賞与を支給日に在職している従業員にのみに支払うとしている場合、結果的に退職者がなく通知した従業員全員にきちんと決算賞与を支給した場合でも、未払いの決算賞与の金額は確定していないものとみなされて今期の経費に計上できないことになります。
給与規定を作っている会社の場合は、必ずご確認ください。
決算賞与は、上記の3つの要件を満たせば、期末までに支給していなくても未払い計上することによって経費計上ができます。従業員のモチベーション向上にもつながり、なおかつ節税対策にもなるわけですが、決算賞与を支払うということは、減った税金よりも多くのキャッシュが出ていくことになりますので、その点は念頭に置いておく必要があります。
実務上は、決算賞与の未払計上は税務調査でチェックされやすい項目になるので、通知書はきちんと書面で履歴を残し、従業員から日付・確認印をもらっておくとよいでしょう。決算賞与の支給に関しても証拠を残すという意味で、できるだけ銀行振込によることをおすすめします。また、給与規定も確認されることがあるので要件を満たしているかどうか見直す必要があります。
物納とは、相続税を金銭で納付することが困難な場合に、相続財産となった土地等の不動産などで相続税を納付することですが、平成29年税制改正により、物納できる財産の順位と財産の範囲が変わりました。この改正は、平成29年4月1日以降の物納申請分からの適用となります。
相続税は、金銭で一括納付することが原則となっています。しかし、納期限までに金銭での一括納付が困難で、かつ、一定の要件を満たしている場合には、その納付が困難な金額を限度として分割での納付(延納)が認められます。そして、延納によっても金銭で納付することが困難な場合には、延納によっても金銭納付が困難な金額の範囲内で、物納が認められています。
物納が認められるためには、下記のすべての要件を満たしている必要があります。
今回の改正では、物納できる財産の順位と財産の範囲が変わりました。
≪第1順位≫
①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
≪第2順位≫
③非上場株式等
④非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
≪第3順位≫
⑤動産
※相続開始前から被相続人が所有していた「特定登録美術品」は、上記の順位によることなく物納に充てることができる財産とすることができます。
※「特定登録美術品」とは、「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」第2条第3号に規定する登録美術品をいい、重要文化財や国宝、その他、世界的に優れた美術品を国が登録し、登録した美術品を美術館において公開するものです。これを物納するためには、相続開始の時にすでに登録を受けていることが必要です。
第1順位の上場株式等の具体例としては、下記のようなものがあります。
〈金融商品取引所に上場されているもの〉
社債、転換社債型新株予約権付社債、特殊法人債、特定社債券、株式、優先株式、新株予約権証券、ETF、REIT、JDR、ETN、日銀出資証券、優先出資証券、特定目的信託の受益証券等
〈金融商品取引所に上場されていないもの〉
オープンエンド型の証券投資信託の受益証券、オープンエンド型の投資法人が発行する投資証券
物納に充てる財産の価額が、物納申請の税額を超えないように財産を選定することになりますが、他に適当な価額の財産がなく、その財産の性質・形状等により分割することが困難な場合など、やむを得ない事情があると税務署長が判断した場合には、物納申請の税額を超える財産による物納が認められます。
この場合には、物納申請にあたって適宜の様式により『やむを得ない事情を記載した書面』を提出することになります。
平成29年8月1日時点で、老齢年金の受給資格を得るために必要とされる「保険料納付済期間と保険料免除期間」(受給資格期間)が10年に短縮されることになりました。
現状は受給資格期間が25年以上必要なので、この改正によって年金の受給資格者が増加することになります。
受給資格期間が10年以上25年未満で、下記の生年月日に該当する人には平成29年2月下旬から7月上旬の間に日本年金機構から「年金請求書(短縮用)」と年金の請求手続きのご案内が送付されます。
請求手続きは29年8月1日以前でも可能となっています。
また、この請求手続きは、海外からも行うことができます。
海外から年金を請求するときは、日本年金機構のホームページからダウンロードした年金請求書に記入をし、必要書類を添えて、日本での最終住所地を管轄する年金事務所へ提出することになります。
年金の決定後、平成29年8月以降に「年金証書・年金決定通知書」が送られてきます。年金の支払いは、平成29年10月以降となります。
ところで、受給資格期間が10年に満たない場合はどうなるのでしょうか?
受給資格期間が10年に満たない場合でも「国民年金の任意加入制度」や「後納制度」を活用すれば、10年という要件を満たすことができる場合があります。
「国民年金の任意加入制度」とは、以下の条件に当てはまる方が対象となります。
(1)日本国内に住所がある人で、年金額を増やしたい方は65歳までの間
(2)日本国内に住所がある人で、受給資格期間を満たしていない方は70歳までの間
(3)海外に住所がある人で20歳以上65歳未満の方(日本国籍を有する人に限る)
また、後納制度とは時効で納めることができなくなった国民年金保険料を平成27年10月~平成30年9月までの3年間に限って、過去5年分まで納めることができる制度です。
注意点として、老齢基礎年金を満額で受給するためには40年の保険料納付期間が必要なため、10年間の保険料納付期間だけでは年金額は少額となるということはご留意ください。