大阪の女性税理士・社会保険労務士 阿部ミチルのお役立ちコラム
税務労務お役立ちコラム
大阪の女性税理士・社会保険労務士のお役立ちコラム
積立NISAの創設
NISA(ニーサ)は、平成26年1月から開始されており、「少額投資非課税制度」とも呼ばれています。NISAは、株式や投資信託などの譲渡益や配当金を非課税にする制度をいい、経済成長と将来の資産形成を支援することを目的としています。
現行のNISAは、投資した年から120万円分(平成27年分以前は100万円分)が最長5年間非課税となります。口座開設が可能な期間は平成26年から平成35年となっています。
この現行のNISAが積立て型の投資に利用しにくいこと、家計の安定的な資産形成を支援する観点から、平成29年度税制改正で、少額からの積立・分散投資を促進するための積立NISAが創設されました。この積立NISAは平成30年1月からスタートします。
積立NISAは、年間の投資額は最大40万円(現行のNISAは最大120万円)を投資した年から20年(現行のNISAは5年)という長期にわたって非課税で運用できる制度になっています。口座開設可能期間は、平成30年から平成49年までです。
非課税枠を最大限活用した場合、40万円×20年間=800万円となるので、現行のNISAよりも非課税での投資総額(最大600万円)は大きくなります。
ただし、積立NISAの場合は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資商品で、金融庁が定める要件を満たしたものに限られています。現行のNISAは「株式」「投資信託」を購入できますが、積立NISAの場合は長期的な資産形成を目的としているため「投資信託」に限られています。例えば、バランス型ファンド、非毎月分配型ファンドがあります。
また、積立NISAは現行のNISAとの併用はできません。どちらかを選択することになります。
投資信託で長期的に資産形成をしたいという方は、積立NISAが向いていると思いますが、株式投資もしたいという方は現行のNISAを活用する方が使い勝手が良いかもしれません。
現行のNISAは、平成29年3月末までで累計投資額が10兆円に達したとう新聞記事がありました。年明けからの株高が続いたことも追い風となっているようですが、家計の金融資産1800兆円のうちわずか0.5%にとどまっており、金融資産のうち937兆円は預貯金に眠ったままのようです。
現行の成人版のNISAに加え、0歳から19歳までの未成年者を対象として平成28年4月から始まった「ジュニアNISA」というものもあります。これは、高齢者の資産を若年層へシフトしていくのが狙いとなっています。未成年者の名義で口座を開き、原則として親権者が代理で運用管理をしていきます。年間80万円分が非課税投資枠となっており、成人版のNISAと同様に最長5年間が非課税期間となっています。ジュニアNISAの場合は、18歳までは払い出しに制限があります。
ジュニアNISAは、平成29年3月末時点の主要証券会社10社合計の口座数が9万1328口座で、現行の成人版NISAの2%にとどまっているようです。ジュニアNISAは、制度ができてからまだ1年ほどですが、現行の成人版NISAにしてもジュニアNISAにしても、まだまだ金融資産は中高年から現役世代へ浸透しておらず、貯蓄から投資への動きがいま一つの印象を受けます。
平成29年度税制改正で創設された積立NISAも含めて、手続きの簡素化や使い勝手の良さが求められるところです。
定年後、継続雇用する際の賃金決定・改定の注意点
平成25年4月1日に改正高年齢者雇用安定法(以下、「改正高齢法」)が施行されました。改正高齢法は、従業員を65歳まで雇用する措置を企業に求めています。
高年齢者雇用安定法は、定年の定めをする場合、60歳を下回る定めをしてはならない(坑内作業の業務を除く)としています。これは定年の定めをすること自体を義務付けるものではなく、次のいずれかの措置を講ずることを企業に求めています。
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定年を65歳以上まで引き上げる
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継続雇用制度を導入する
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定年制そのものを廃止する
現在、企業の多くは上記2の60歳定年に達した人を継続して雇用する「継続雇用制度」を導入しています。
改正高齢法では、この「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みが廃止され、労使協定の基準に該当しない人も、老齢厚生年金の受給開始年齢に達するまでは、原則として希望者全員を再雇用しなければいけなくなりました。
引き上げのスケジュールは、以下のようになっています。
- 平成25年4月1日~平成28年3月31日まで・・・61歳
- 平成28年4月1日~平成31年3月31日まで・・・62歳
- 平成31年4月1日~平成34年3月31日まで・・・63歳
- 平成34年4月1日~平成37年4月1日まで・・・64歳
- 平成37年4月1日以降・・・65歳
ここで定年後に再雇用をした場合に給料を減額するのは「不利益変更」にあたらないのか?という疑問が生じるかもしれません。
これは「不利益変更」の問題は生じないと解されています。再雇用の場合は、60歳までの労働契約は一旦終了するため、そもそも「不利益変更」にあたるかどうかを比べる対象がないという考え方になります。
ただし、就業規則で再雇用後の給料などの労働条件を定め、そのことを周知させている場合は、再雇用後の労働条件を就業規則に定められている労働条件に満たないものとすることはできません。
定年後に継続して雇用する場合、従業員の体力や会社の状況も考えて労働条件を見直すことになります。具体的には次のような労働条件について考えていく必要があります。
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労働時間および労働日数はどうするのか?フルタイムなのか、短時間勤務とするのか?社会保険の加入も含めて検討する必要があります。
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給料は月給制なのか、時間給なのか。
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賞与や退職金の有無
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継続雇用した従業員のポジションは今までと同じなのか、それとも業務の負担を減らし責任の程度も変更するのか。
再雇用後の労働条件については、早めに従業員と話し合う機会を設けるようにしましょう。その際、健康状態も確認しながら、労働条件を決めていくようにしましょう。また、再雇用者の生活設計も含めて検討するのが望ましいです。再雇用後の給料を大幅に下げる場合は、勤務日数、労働時間を減らしたり、責任の程度、業務の内容も見直すことが必要です。業務内容や責任の程度が今までと変わらないのに給料が下がったのでは、再雇用者の不満が大きくなります。給料と業務内容(業務の負担)はバランスが取れるように考えるようにしましょう。
また、再雇用者の労働条件は、再雇用者の能力に応じて再雇用者ごとに決めるのが望ましいです。再雇用者全員一律とすると、逆に不満が生じる可能性があります。
少子高齢化によって労働力人口が減少し、人手不足が問題となっています。再雇用後の労働条件について話し合った結果、従業員が再雇用を希望するかどうかを早めに確認することは、人材の確保や資金繰りなど会社を経営する上でとても重要となります。
「法定相続情報証明制度」が始まります
不動産の登記名義人(所有者)が死亡した場合、所有権移転の登記をしなければなりません。これを相続登記といいますが、この相続登記がなされないまま放置されている不動産が増加し、土地の所有者が不明だったり、空き家問題の一因となっているといった指摘がされています。
このような問題に対処するため法務省は、平成29年5月29日(月)から「法定相続情報証明制度」の運用を開始します。
この制度を利用して交付された「法定相続情報一覧図の写し」は、相続登記の申請手続をはじめ、被相続人名義の預金の払戻し等、様々な相続手続に利用することができます。この「法定相続情報一覧図の写し」は無料で必要な通数が交付されるので、預金口座が複数ある方には特にメリットが大きいです。また、手続きを同時に進められるので時間的にも短縮することができます。この制度によって、相続手続に係る相続人・手続の担当部署双方の負担の軽減を図ることを一つの目的としています。
≪手続きの流れ≫
1.申出(法定相続人または代理人)
①市区町村の窓口で戸除籍謄本等を収集
②法定相続人情報一覧図を作成
③所定の申出書を記載し、①②の書類を添付して登記所に申し出る
2.確認・交付(登記所)
①登記官による確認、法定相続人情報一覧図を保管
②認証文付き法定相続人情報一覧図の写しの交付、戸除籍謄本等の返却
3.利用
各種相続手続きで利用。
不動産の相続登記をきちんとしておかないと、後々になってその不動産を売却することにした場合などに困ってしまうことがあるので、活用できる制度は大いに利用して、不動産の相続登記も忘れずに行うようにしてください。