厚生労働省は、平成29年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ、公表しています。
公表している結果は以下の通りです。
(1) 是正企業数 1,870企業(前年度比 521企業の増)
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、262企業(前年度比 78企業の増)
(2) 対象労働者数 20万5,235人(同 107,257人の増)
(3) 支払われた割増賃金合計額 446億4,195万円(同 319億1,868万円の増)
(4) 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり2,387万円、労働者1人当たり22万円
結果を見ると増加傾向にあるのがうかがえます。昨今では、弁護士事務所に未払残業代の請求を依頼する労働者も増えており、「解決金」という名目で支給するケースもあります。
では、未払残業代の支給をする場合、源泉所得税の徴収はどのようになるのでしょうか?
未払残業代の支給方法として、当期に①「一時金(精算金等)」として支給する場合と②「過去分の給与」として支給する場合が考えられます。
まず、源泉所得税の取扱い。
⓵一時金の場合・・・当期の賞与として源泉徴収
※「解決金」という名目出の支給であっても「賞与」として認識します。
②過去分の給与とする場合・・・年末調整のやり直し等
では、法人税法上はどうなるでしょうか?
法人税では、当期に損金算入(経費とする)します。これは、過去の労働に起因する残業代であっても債務が確定したときに損金に算入するという考え方があるためです。
次に、未払残業代を一括ではなく分割で支給する場合はどうなるでしょうか?
分割支給をする場合、例えば約1年間定期的に支給するのであれば賞与ではなく「給与」として源泉徴収していきます。定期ではなく不定期で例えば2回の分割支給の場合は「賞与」として源泉徴収していきます。
ところで、支給対象者が元従業員の場合、「扶養控除等申告書」は退職によってその効力はなくなっているため、「給与」「賞与」の源泉所得税を計算する際は「乙欄」を使用します。
「賞与」の源泉徴収税額の計算は、前月の給与がベースとなりますが、もうすでに退職している従業員の場合は、前月分の給与がない場合も考えられます。この場合は、下記のように計算します。
⓵(賞与の支給額ー社会保険料等)÷6※
②⓵の金額を給与所得の源泉徴収税額表(月額表)の「乙欄」に当てはめる。
③②で求めた税額×6=前月の給与がない場合の賞与の源泉徴収税額
※その賞与の計算の基礎となった期間が6か月を超える場合は12
源泉徴収税額の計算はともあれ、これからますます企業にとっては労務管理につてい厳しくなっていきますが、未払残業代の請求をされないようにきちんと給与計算を行うようにしましょう。
あっという間に9月も終わりに差し掛かり、年末調整の時期が近づいてきました。控除証明書もちらほら届いている方もいらっしゃるかもしれません。
平成30年の年末調整では配偶者控除、配偶者特別控除の税制改正の影響で今までと変わった点があるので、解説していきます。
【前年まで従業員さんに提出していただいてたのは、以下の二枚】
・翌年分の扶養控除等申告書
・当年分の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書
【平成30年からは、1枚増えて3枚に】
・翌年分の扶養控除等申告書
・当年分の保険料控除申告書
・当年分の配偶者控除等申告書
今までの「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」が「保険料控除申告書」と「配偶者控除等申告書」の2枚に分かれたイメージです。
《保険料控除申告書》
内容的には変わっていなくて、前年までのものより欄がゆったりになりました。
《配偶者控除等申告書》
平成30年からは給与所得者本人の所得金額の区分によって配偶者控除、配偶者特別控除の額が変わるので、「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」で区分を判定してから、配偶者の所得金額でさらに控除額を判定していくことになります。実際、見慣れない書類で従業員さんが自分の所得金額を把握するのも難しいかもしれないので、「配偶者控除等申告書」の裏面の説明書きが印刷されたものを渡したり、記載例も一緒に渡してあげた方がよいでしょう。
「配偶者控除等申告書」は、平成30年からは「配偶者特別控除」を受ける給与所得者だけでなく「配偶者控除」を受ける給与所得者も提出が必要になるのでご注意ください。
平成30年から配偶者控除と配偶者特別控除の取り扱いが大きく変わるため、1月からの給与計算について注意が必要になります。
給与計算での処理
配偶者控除および配偶者特別控除の改正により「平成30年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の書き方も変わりました。
今までなかった「源泉控除対象配偶者」という言葉。今までの配偶者控除は、給与所得者自身の所得(年収)は関係ありませんでしたが、改正で給与所得者にも所得(年収)の条件が付けられました。そして、配偶者の条件は、今までは給与収入が103万円以下という条件でしたが、これが150万円以下に引き上げられています。
★給与所得者の条件
・平成30年中の所得の見積額が900万円以下の方(給与年収1,120万円以下)
★配偶者の条件
・給与所得者と生計を一にする配偶者
・平成30年中の所得の見積額が85万円以下の方(給与年収150万円以下)
・青色事業専従者として給与の支払を受ける方や白色事業専従者でないこと
つまり、給与所得者の年収が1,120円以下、かつ、配偶者の年収が150万円以下で「源泉対象控除対象配偶者」となります。
配偶者の年収 |
配偶者控除 |
配偶者特別控除 |
合計控除額 |
103万円以下 |
380,000 |
0 |
380,000 |
103万円超~150万円以下 |
0 |
380,000 |
380,000 |
150万円超~155万円以下 |
0 |
360,000 |
360,000 |
155万円超~160万円以下 |
0 |
310,000 |
310,000 |
160万円超~166万7,999円以下 |
0 |
260,000 |
260,000 |
166万8,000円~175万1,999円以下 |
0 |
210,000 |
210,000 |
175万2,000円~183万1,999円以下 |
0 |
160,000 |
160,000 |
183万2,000円~190万3,999円以下 |
0 |
110,000 |
110,000 |
190万4,000円~197万1,999円以下 |
0 |
60,000 |
60,000 |
197万2,000円~201万5,999円以下 |
0 |
30,000 |
30,000 |
201万6,000円以上 |
0 |
0 |
0 |
源泉控除対象配偶者
平成30年分の給与計算を行う際は、この「源泉対象控除対象配偶者」を加味して源泉徴収をしていくことになります。今までは年収103万円以下の配偶者を扶養の数1人として源泉徴収していましたが、年収103万円超~150万円以下の配偶者についても扶養の数1人として源泉徴収をしていきます。
給与所得者の年収もそうですが、配偶者の年収もあくまでも見積額になるので、年の途中で源泉控除対象配偶者の年収見込みに変更があって、源泉控除対象配偶者に該当したり、該当しなくなった場合は、従業員から変更後の内容を記入した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらうようにしましょう。
年末調整での処理
年末調整では、給与所得者の合計所得金額が1,000万円以下(年収1,220万円以下)、かつ、配偶者の合計所得金額38万円以下(年収103万円以下)または38万円超123万円以下(年収103万円超201万5,999円以下)に該当する場合に、それぞれ配偶者控除、配偶者特別控除を加味して年税額を計算していきます。
ですので、給与計算では「源泉控除対象配偶者」としてこなかった所得金額900万円超1,000万円以下(年収1,120万円超1,220万円以下)の給与所得者や所得金額85万円超123万円以下(年収150万円超201万5,999円以下)の配偶者については、年末調整の際に配偶者控除、配偶者特別控除を反映させていくことになります。
配偶者控除、配偶者特別控除は、改正でかなり複雑になってきています。年末調整では、給与所得者や配偶者の所得金額の確認をしっかりするようにしましょう。
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ただ、インターネット上で済ませることができるといっても、利用時間は、月曜日から金曜日まで(国民の祝日・休日、12月29日から1月3日までの年末年始を除く。)の8時30分から21時までと決まっているので、うっかりしていると時間が過ぎてしまって、次の日まで待つことになるといったこともしばしばあります(汗)
急いでいるときはそこは要注意です。
あとは届くのを待つだけとなります。
今回は、夜に決済を終えて翌々日には届きました!