昨今の原材料価格やエネルギーコスト、労務費などの上昇で自社の企業努力のみではコスト増が吸収しきれないなどの問題が発生することがあるかと思います。 そこで今回は、下請法という法律について紹介します。 下請法は下請事業の公正化を図ったり、下請事業者の利益を保護するための法律です。 基本的には親事業者側が守るべきルールが定められており、そのルールに反した場合に行政が親事業者に法的措置を行うこともある法律です。 独占禁止法との関係 下請法は独占禁止法の補完法です。補完しているのは、独占禁止法の「優越的地位の濫用行為を 取り締まる」という部分です。 独占禁止法の「優越的地位の濫用」が優越的地位を様々な要素から総合的に判断するのに対して、下請法は下請取引の発注者を資本金区分により優越的地位にあるものとして取り扱います。 そのことから、独占禁止法に比べてよりスピーディかつ効果的に機能してます。 下請法の対象となる取引 1取引の内容と2事業者の資本金の両面から定められています。 1取引の内容とは主に、1製造委託、2修理委託、3情報成果物作成委託、4役務提供委託に大別されており、その適用対象となる取引は多岐に渡ります。 2事業者の資本金については上記1の取引内容によって区分を定めています。 下請法には、親事業者が守るべき4つの義務と7つの禁止事項が定められています。 4つの義務 1書面の交付義務 2支払い期日を定める義務 3書類の作成・保存義務 4遅延利息の支払い義務 11の禁止事項 1受領拒否の禁止 2下請代金支払い遅延の禁止 3下請代金減額の禁止 4返品の禁止 5買いたたきの禁止 6購入・利用強制の禁止 7報復措置の禁止 8有償支給原材料費等の対価の早期決済の禁止 9割引困難な手形の交付の禁止 10不当な経済上の利益の提供要請の禁止 11不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止 昨今の価格高騰化の影響を受けて、例えばこのような状況になっていませんか? 状況:価格高騰化における原材料費や人件費の明らかなコスト増があり、 下請事業者側から単価 の引き上げの要求があったにも関わらず、下請事業者と十分に協議することなく単価を据え置いた。 この場合は親事業者側が「買いたたき」の禁止事項に該当しているおそれがあります。 下請代金は下請事業者の事情を十分に考慮してもらい事前に協議の上定めることが必要です。 このような状態にある場合は、親会社側に下請法上の問題を指摘してみましょう。 親事業者と下請業者の共存共栄が重要 このように、下請法は親事業者側に義務や禁止事項のある法律ですが、たとえ下請事業者側が了解を得ていても、 また親事業所に違法性の意識がなくとも、禁止事項に触れると親事業者側が違反の対象となることがあります。 口約束での取引や、長年の慣習での取引、契約書等の発行が無い取引などには十分注意が必要です。 下請法上のトラブルを防ぐためには親事業者側に積極的に価格交渉の場に立ってもらうように働きかけたり、密に連絡を取り合うことが重要になります。 日々の業務に追われてそこまで手が回らない、や親会社に直接指摘しにくいなどの場合は公正取引委員会や、 最寄りの商工会議所及び商工会に設置されている相談窓口である「独占禁止法相談ネットワーク」でも相談が可能です。