税務労務お役立ちコラム

大阪の女性税理士・社会保険労務士 阿部ミチルのお役立ちコラム

代表税理士・社会保険労務士 阿部ミチル

大阪の女性税理士・社会保険労務士のお役立ちコラム

社会保険の加入対象の拡大についての会社側の対応

令和410月から、段階的に社会保険の適用が拡大されます。それにより、一部のパートアルバイトの方の社会保険の加入が義務化され、社会保険料の負担額が変わります。

具体的には、企業の従業員数常時501人以上常時101人以上に適用拡大されます。最終的に令和6年の10月には、51人以上へと段階的に拡大されます。

また現行の法律では、短時間労働者の勤務期間が、「雇用期間が1年以上見込まれる」であったのが、令和410月の改正で「雇用期間が2ヶ月以上見込まれる」に対象が拡大されます。

対象

要件

現行

令和410月〜

令和610月〜

事業所

事業所の規模

常時501人以上

常時101人以上

常時51人以上

短時間労働者

労働時間

週の労働時間が20時間以上

変更なし

変更なし

 

賃金給与

月額88,000円以上

変更なし

変更なし

 

勤務期間

雇用期間が1年以上見込まれる

雇用期間が2ヶ月以上見込まれる

雇用期間が2ヶ月以上見込まれる

 

適用除外

学生ではないこと

変更なし

変更なし

厚生労働省によると、令和410月の企業の規模要件の変更により、新たに45万人が社会保険の適用対象となり、企業の社会保険料負担は1130億円増加するようです。

このように、今回の改正は企業・労働者の双方に大きな影響を与えることになります。

今回の改正が企業に与える影響として最も大きいものは、社会保険料の負担の増加です。

厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトでは社会保険料シミュレーターがあり、実際にどのくらいの負担になるのかを簡単に概算することができます。

一方で、労働者の方も社会保険の加入となると手取りが減るなどの生活に大きな変化を与えることとなります。それによって、働き方の変更を希望するパート・アルバイトの方がいるかもしれません。

いずれにせよ、企業側は加入対象者の把握社内での周知徹底と、新たに加入対象者となる人への説明会や面談を行うなど従業員とのコミュニケーションをとるなどの社内準備が必要となります。

その際に労働者に、労働時間の延長や、正社員への転換などのキャリアアップの提案を行うことも可能です。この場合、施行期日より前に適用拡大するとキャリアアップ助成金などの支援制度を活用することもできます。

施行期日より前に自主的に社会保険の適用拡大を行った場合(選択的適用拡大)に利用できる助成金及び補助金があります。

キャリアアップ助成金の選択的適用拡大導入時処遇コースでは、短時間労働者の意向を大切に把握し、被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取り組みの実施を行った事業主に助成金が支給されます。

また、ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金の補助金は、選択的適用拡大を行うことで、応募要件が緩和されたり、審査の加点項目になるなど、優先的な支援を受けることができます。

改正内容を知らないままだと、社会保険料増額への対応が後手に回ったり、従業員への信頼感を落としてしまうかもしれません。

制度内容の把握や従業員への周知などの余裕をもった準備を行い、従業員に社会保険加入のメリットや今後の労働時間などについて積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。

価格高騰化で下請法を知っておこう。

昨今の原材料価格やエネルギーコスト、労務費などの上昇で自社の企業努力のみではコスト増が吸収しきれないなどの問題が発生することがあるかと思います。 
そこで今回は、下請法という法律について紹介します。

下請法は下請事業の公正化を図ったり、下請事業者の利益を保護するための法律です。

基本的には親事業者側が守るべきルールが定められており、そのルールに反した場合に行政が親事業者に法的措置を行うこともある法律です。


独占禁止法との関係
下請法は独占禁止法の補完法です。補完しているのは、独占禁止法の「優越的地位の濫用行為を 取り締まる」という部分です。
独占禁止法の「優越的地位の濫用」が優越的地位を様々な要素から総合的に判断するのに対して、下請法は下請取引の発注者を資本金区分により優越的地位にあるものとして取り扱います。
そのことから、独占禁止法に比べてよりスピーディかつ効果的に機能してます。


下請法の対象となる取引
1取引の内容と2事業者の資本金の両面から定められています。

1取引の内容とは主に、1製造委託、2修理委託、3情報成果物作成委託、4役務提供委託に大別されており、その適用対象となる取引は多岐に渡ります。 

2事業者の資本金については上記1の取引内容によって区分を定めています。

下請法には、親事業者が守るべき4つの義務と7つの禁止事項が定められています。 

4つの義務
1書面の交付義務
2支払い期日を定める義務
3書類の作成・保存義務
4遅延利息の支払い義務


11の禁止事項
1受領拒否の禁止
2下請代金支払い遅延の禁止 3下請代金減額の禁止
4返品の禁止
5買いたたきの禁止
6購入・利用強制の禁止
7報復措置の禁止 
8有償支給原材料費等の対価の早期決済の禁止 
9割引困難な手形の交付の禁止 
10不当な経済上の利益の提供要請の禁止 
11不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止
   
昨今の価格高騰化の影響を受けて、例えばこのような状況になっていませんか?
状況:価格高騰化における原材料費や人件費の明らかなコスト増があり、
下請事業者側から単価 の引き上げの要求があったにも関わらず、下請事業者と十分に協議することなく単価を据え置いた。
この場合は親事業者側が「買いたたき」の禁止事項に該当しているおそれがあります。
下請代金は下請事業者の事情を十分に考慮してもらい事前に協議の上定めることが必要です。 
このような状態にある場合は、親会社側に下請法上の問題を指摘してみましょう。

親事業者と下請業者の共存共栄が重要
このように、下請法は親事業者側に義務や禁止事項のある法律ですが、たとえ下請事業者側が了解を得ていても、
また親事業所に違法性の意識がなくとも、禁止事項に触れると親事業者側が違反の対象となることがあります。
口約束での取引や、長年の慣習での取引、契約書等の発行が無い取引などには十分注意が必要です。 
下請法上のトラブルを防ぐためには親事業者側に積極的に価格交渉の場に立ってもらうように働きかけたり、密に連絡を取り合うことが重要になります。
日々の業務に追われてそこまで手が回らない、や親会社に直接指摘しにくいなどの場合は公正取引委員会や、
最寄りの商工会議所及び商工会に設置されている相談窓口である「独占禁止法相談ネットワーク」でも相談が可能です。

被災者に対して自社製品等を提供した場合の法人税法上の取扱い

今年は、台風や地震など多くの災害が起きていますね。。。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

被災された方に自社の製品等を無償で提供する法人もあるかと思います。この場合の自社製品等の提供は、どのような会計処理になるでしょうか?

法人税基本通達9-4-6の4(自社製品等の被災者に対する提供)では、

法人が不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用の額は、寄附金の額に該当しないものとする。

とあります。したがって、不特定又は多数の被災者を救援するため緊急に行うものである場合には、寄附金や交際費には該当せず、広告宣伝費に準ずるものとして損金の額に算入されます。

この自社製品等は、自社で製造した製品に限らず、また自社の社名が入っていない物品や他から購入した物品であっても、その企業のイメージアップにつながるなど、実質的に広告宣伝の効果を生じるようであれば、広告宣伝費に準ずるものとして損金の額に算入して差し支えありません。