長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果:約7割の事業場が法令違反

厚生労働省では、「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果(平成29年度)」を平成30年8月7日に公表しています。これは、平成29年度に、長時間労働が疑われる25,676事業場に対して実施された労働基準監督署による監督指導の結果を取りまとめたものです。

この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働数が1カ月当たり、80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としています。

平成29年度は、監督指導を実施した事業場のうち70.3%の事業場で労働基準法などの法令違反が認められました。平成28年度の66.0%よりも、その割合が増加しています。

 

【平成29年4月から平成30年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場:25,676事業場
このうち、18,061事業場(全体の70.3%)で労働基準関係法令違反あり。

(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
① 違法な時間外労働があったもの:11,592事業場(45.1%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:        8,592事業場(74.1%)
うち、月100時間を超えるもの:     5,960事業場(51.4%)
うち、月150時間を超えるもの:       1,355事業場(11.7%)
うち、月200時間を超えるもの:     264事業場( 2.3%)
② 賃金不払残業があったもの:1,868事業場(7.3%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:         1,102事業場(59.0%)
③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:2,773事業場(10.8%)

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
① 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,986事業場(81.7%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:      13,658事業場(65.1%)
② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,499事業場(17.5%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:       1,878事業場(41.7%)

※ 脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があるため。

(厚生労働省ホームページより)

なお、この公表に当たって、監督指導事例も紹介されています。いくつかピックアップすると、

◎36協定を締結・届出することなく、全労働者の約3分の1に当たる労働者28名について、月100時間を超える違法な時間外・休日労働(最長:月224時間)を行わせていた。

◎法定の休憩時間を与えていなかった。

◎健康診断において異常の所見があった者に係る医師の意見聴取を行っていなかった。

◎常時50人以上の労働者を使用しているにもかかわらず、1年以内ごとに1回のストレスチェックを実施していなかった。

平成31年(2019年)4月から、働き方改革関連法による労働基準法や労働安全衛生法の改正も実施され、より一層の法令遵守が求められることになります。

ご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。