キャリアアップ助成金は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者(正社員待遇を受けていない無期雇用労働者を含みます。以下「有期契約労働者等」といいます。)の企業内でのキャリアアップ等を促進する取組を実施した事業主に対して助成をするものであ り、有期契約労働者等の安定した雇用形態への転換等を目的としています。
このキャリアアップ助成金が、平成29年度から3コースだったものが8コースに細分化されました。新設のコースも増えて、使いやすい助成金もあります。
新設された助成金の中で、今回は「諸手当制度共通化コース」について触れていきます。
「諸手当制度共通化コース」は、有期契約労働者等の処遇改善を通じたキャリアアップを目的としており、労働協約又は就業規則の定めるところにより、その雇用する有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当に関する制度を新たに設けて、適用した場合に支給されます。
正規雇用労働者に係る諸手当制度を、新たに設ける有期契約労働者等の諸手当制度と同時またはそれ以前に導入している事業主が対象となります。この制度は6ヶ月以上運用していることが必要となります。
助成金の受給額
1事業所当たり・・・38万円(生産性の向上が認められる場合48万円)
大企業の場合・・・28万5千円(生産性の向上が認められる場合36万円)
※1事業所当たり1回のみ
対象となる労働者
次の①~④のすべての要件に当てはまる労働者が対象となります。
①労働協約又は就業規則の定めるところにより、諸手当制度を適用した日の前日から起算して3か月以上前の日から適用後6か月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期契約労働者等であること。
② 諸手当制度を適用した日以降の期間について、支給対象事業主の事業所において、雇用保険被保険者であること。
③ 諸手当制度を新たに作成し適用を行った事業所の事業主又は取締役の3親等以内の親族以外の者であること。
※3親等以内の親族とは、配偶者、3親等以内の血族および姻族をいいます。
④支給申請日において離職していない者であること。
※本人の都合による離職及び天災その他やむを得ない理由のために事業の継続が困難となったこと又は本人の責めに帰すべき理由による解雇を除きます。
対象となる事業主
次の1から9までのすべてに該当する事業主が対象となります。
1.キャリアアップ計画書に記載されたキャリアアップ期間中に、労働協約又は就業規則の定めるところによ り、その雇用する有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の次の(1)から(11)のいずれか の諸手当制度を新たに設けた事業主であること。
(1) 賞与
一般的に労働者の勤務成績に応じて定期又は臨時に支給される手当(いわゆるボーナス)
(2) 役職手当
管理職等、管理・監督ないしこれに準ずる職制上の責任のある労働者に対し、役割や責任の重さ等に応じて支給される手当
(3) 特殊作業手当・特殊勤務手当
著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務に従事する労働者に対し、その勤務の特殊性に応じ て支給される手当(人事院規則9-30(特殊勤務手当)に規定する特殊勤務手当に相当するもの等)
(4) 精皆勤手当
労働者の出勤奨励を目的として、事業主が決めた出勤成績を満たしている場合に支給される手当
(5) 食事手当
勤務時間内における食費支出を補助することを目的として支給される手当
(6) 単身赴任手当
勤務する事業所の異動、住居の移転、父母の疾病その他やむを得ない事情により、同居していた扶養親族と別居すること となった労働者に対し、異動前の住居又は事業所と異動後の住居又は事業所との間の距離等に応じて支給される手当
(7) 地域手当
複数の地域に事業所を有する場合に、特定地域に所在する事業所に勤務する労働者に対し、勤務地の物価や生活様式 の地域差等に応じて支給される手当
(8) 家族手当
扶養親族のある労働者に対して、扶養親族の続柄や人数等に応じて支給される手当(扶養している子どもの数や教育に要 する費用に応じて支給される子女教育手当を含む。)
(9) 住宅手当
自ら居住するための住宅(貸間を含む。)又は単身赴任する者で扶養親族が居住するための住宅を借り受け又は所有して いる労働者に対し、支払っている家賃等に応じて支給される手当
(10) 時間外労働手当
労働者に対して、労働基準法(昭和22年法律第49号)第37条第1項に基づき法定労働時間を超えた労働時間に対する 割増賃金として支給される手当
(11) 深夜・休日労働手当
労働者に対して、労働基準法第37条第1項に基づき休日の労働に対する割増賃金として支給される手当又は同条第4項 に基づき午後10時から午前5時までの労働に対する割増賃金として支給される手当
※1 諸手当の名称が一致していない場合でも、手当の趣旨・目的から判断して実質的に(1)から(11)までに該当していれば要件を満たします。
※2 現金支給された場合に限ります。(クーポン等により支給された場合は対象外)
2 .1の諸手当制度に基づき、対象労働者1人当たり次の(1)から(3)までのいずれかに該当し、6か月分の 賃金を支給した事業主であること。
(1) 賞与については、6か月分相当として50,000円以上支給した事業主
(2) 役職手当、特殊作業手当・特殊勤務手当、精皆勤手当、食事手当、単身赴任手当、地域手当、家族手当、住宅手当については、1か月分相当として3,000円以上支給した事業主
(3)時間外労働手当、深夜・休日労働手当については、割増率を法定割合の下限に5%以上加算して支給した事業主
3 .正規雇用労働者に係る諸手当制度を、新たに設ける有期契約労働者等の諸手当制度と同時又はそれ 以前に導入している事業主であること。
4 .有期契約労働者等の諸手当の支給について、正規雇用労働者と同額又は同一の算定方法としている 事業主であること。
5. 当該諸手当制度を全ての有期契約労働者等と正規雇用労働者に適用させた事業主であること。
6 .当該諸手当制度を6か月以上運用している事業主であること。
7. 当該諸手当制度の適用を受ける全ての有期契約労働者等と正規雇用労働者について、適用前と比べ て基本給等を減額していない事業主であること。
8 .支給申請日において当該諸手当制度を継続して運用している事業主であること。
9 .生産性要件を満たした場合の支給額の適用を受ける場合にあっては、当該生産性要件を満たした事業主であること。
※「諸手当制度共通化コース」は、申請時点で非正規労働者が退職し、正規雇用労働者のみとなった場合には受給できません。
支給申請期間
対象労働者に、諸手当の支給後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2カ月以内に申請してください。
就業規則等の規定により、時間外手当を実績に応じ基本給等とは別に翌月等に支給している場合、6か月分の時間外手当が支給される日を賃金を支給した日とします。また、時間外勤務の実績がなく、結果として支給がない場合を含みます。
手続きの流れ
1.キャリアアップ計画の作成し、諸手当制度を共通化する日までに提出
雇用保険適用事業所ごとに、「キャリアアップ管理者」を配置するとともに、労働組合等の意見を聞いて「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局の確認を受けます。
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2.諸手当制度の共通化の実施
・ 共通化後の雇用契約書や労働条件通知書を対象労働者に交付する必要があります。
・ 当該諸手当制度の適用を受けるすべての有期契約労働者等と正規雇用労働者の基本給等を適用前と比 べて減額していない必要があります。
3.諸手当制度共通化後の賃金に基づき6か月分の賃金を支給・支給申請
諸手当の支給後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請します。
※賃金には時間外手当等も含みます。
※就業規則等の規定により、時間外手当を実績に応じ基本給等とは別に翌月等に支給している場合、6か月分の時間外手当が支給される日を賃金を支給した日とします(時間外勤務の実績がなく、結果として支給がない場合を含みます。)。
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4.支給決定
キャリアアップ助成金の中でも、比較的使いやすいと思われる「諸手当制度共通化コース」についてご紹介しました。非正規労働者のモチベーションアップ、ひいては生産性向上につなげていけると思うので、興味のある方は検討してみてください。