今回の9月4日の台風では、想定外の甚大な被害となり、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。リフォーム会社の方は休日返上で対応に追われているとお聞きしています。1日も早く通常の生活に戻る日が来るようお祈り申し上げます。
今回の台風は前日からJRが運休するという情報もあり、前日から臨時休業にすると決めていた会社も多くあったかと思います。また、直近では北海道で起きた地震でも、停電の影響もあり臨時休業にした会社は多かったと思います。このような場合の休業日の給与の取扱いはどうなるでしょうか?
労働基準法第26条には、以下のように書かれています。
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。(傍線筆者)
この条文では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合」とあります。「使用者の責めに帰すべき事由」は広範に定められており、例えば事業業績悪化に伴う生産調整のための休日や取引先の倒産による休日など直接事業者の責任ではないものも含まれます。
自然災害による休業の場合は、こういった使用者の責に帰すべき事由には当てはまらないため、休業手当の支払義務はないと考えられます。
では、さらに詳しく解説していきます。
前日から臨時休業を決めていた場合(全日休業)、給与の支払い義務はあるか?
自然災害により始業時刻前に全日休業とした場合は、使用者の責に帰すべき事由には該当せず、かつ、使用者の経営管理上の責任とも考えられないため、給与の支払い義務は生じないものと考えて結構です。
一部休業とした場合の給与の支払い義務は?
今回の9月4日の台風では、午前中だけ仕事という方もいらっしゃったかと思います。このように就業時間中に従業員を早退させる場合には一応使用者責任の範囲外とみなされます。ただし、単に雨が降っているから早退させるというのでは合理的な理由に欠けるため、暴風警報や大雨警報の発令など客観的な裏付けが必要なので慎重な判断が求められます。
このように1日のうちの一部を休業とした場合の取扱いについては、現実に就労した時間に対し支払われる賃金が平均賃金の100分の60に満たない場合には、その差額を支払う義務が生じます。
例えば、平均賃金が1万円の従業員の場合、休業手当は6,000円(10,000円×60%)となります。
1日のうち一部休業した場合、現実に就労した分の賃金が5,000円である場合は6,000円-5,000円=1,000円となり、休業手当として1,000円を支払うことになります。現実に就労した分の賃金が8,000円であった場合には、8,000円>6,000円となるため、休業手当を支払わなくてもよいことになります。
有給休暇との関係は?
有給休暇は労働の義務があることを前提としているため、台風のために「休日」とされていた場合はそもそも労働の義務はなく、従業員は有給休暇を取得できないと考えられます。したがって、従業員が事後的に有給休暇にしてほしいと言ってきたとしても、それを認める義務は会社側にはありません。
台風で臨時休業になった日と事前に申請していた有給休暇の日が被った場合は、予知して申請されたわけではないので会社は有給休暇を認めなくてはいけません。
また、就業規則で、自然災害の際の特別休暇について定めていた場合は、それに従うことになります。会社側が恩恵的に有給休暇としてあげる分には全く問題はありません。