社会保険の加入対象の拡大についての会社側の対応

令和410月から、段階的に社会保険の適用が拡大されます。それにより、一部のパートアルバイトの方の社会保険の加入が義務化され、社会保険料の負担額が変わります。

具体的には、企業の従業員数常時501人以上常時101人以上に適用拡大されます。最終的に令和6年の10月には、51人以上へと段階的に拡大されます。

また現行の法律では、短時間労働者の勤務期間が、「雇用期間が1年以上見込まれる」であったのが、令和410月の改正で「雇用期間が2ヶ月以上見込まれる」に対象が拡大されます。

対象

要件

現行

令和410月〜

令和610月〜

事業所

事業所の規模

常時501人以上

常時101人以上

常時51人以上

短時間労働者

労働時間

週の労働時間が20時間以上

変更なし

変更なし

 

賃金給与

月額88,000円以上

変更なし

変更なし

 

勤務期間

雇用期間が1年以上見込まれる

雇用期間が2ヶ月以上見込まれる

雇用期間が2ヶ月以上見込まれる

 

適用除外

学生ではないこと

変更なし

変更なし

厚生労働省によると、令和410月の企業の規模要件の変更により、新たに45万人が社会保険の適用対象となり、企業の社会保険料負担は1130億円増加するようです。

このように、今回の改正は企業・労働者の双方に大きな影響を与えることになります。

今回の改正が企業に与える影響として最も大きいものは、社会保険料の負担の増加です。

厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトでは社会保険料シミュレーターがあり、実際にどのくらいの負担になるのかを簡単に概算することができます。

一方で、労働者の方も社会保険の加入となると手取りが減るなどの生活に大きな変化を与えることとなります。それによって、働き方の変更を希望するパート・アルバイトの方がいるかもしれません。

いずれにせよ、企業側は加入対象者の把握社内での周知徹底と、新たに加入対象者となる人への説明会や面談を行うなど従業員とのコミュニケーションをとるなどの社内準備が必要となります。

その際に労働者に、労働時間の延長や、正社員への転換などのキャリアアップの提案を行うことも可能です。この場合、施行期日より前に適用拡大するとキャリアアップ助成金などの支援制度を活用することもできます。

施行期日より前に自主的に社会保険の適用拡大を行った場合(選択的適用拡大)に利用できる助成金及び補助金があります。

キャリアアップ助成金の選択的適用拡大導入時処遇コースでは、短時間労働者の意向を大切に把握し、被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取り組みの実施を行った事業主に助成金が支給されます。

また、ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金の補助金は、選択的適用拡大を行うことで、応募要件が緩和されたり、審査の加点項目になるなど、優先的な支援を受けることができます。

改正内容を知らないままだと、社会保険料増額への対応が後手に回ったり、従業員への信頼感を落としてしまうかもしれません。

制度内容の把握や従業員への周知などの余裕をもった準備を行い、従業員に社会保険加入のメリットや今後の労働時間などについて積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。

価格高騰化で下請法を知っておこう。

昨今の原材料価格やエネルギーコスト、労務費などの上昇で自社の企業努力のみではコスト増が吸収しきれないなどの問題が発生することがあるかと思います。 
そこで今回は、下請法という法律について紹介します。

下請法は下請事業の公正化を図ったり、下請事業者の利益を保護するための法律です。

基本的には親事業者側が守るべきルールが定められており、そのルールに反した場合に行政が親事業者に法的措置を行うこともある法律です。


独占禁止法との関係
下請法は独占禁止法の補完法です。補完しているのは、独占禁止法の「優越的地位の濫用行為を 取り締まる」という部分です。
独占禁止法の「優越的地位の濫用」が優越的地位を様々な要素から総合的に判断するのに対して、下請法は下請取引の発注者を資本金区分により優越的地位にあるものとして取り扱います。
そのことから、独占禁止法に比べてよりスピーディかつ効果的に機能してます。


下請法の対象となる取引
1取引の内容と2事業者の資本金の両面から定められています。

1取引の内容とは主に、1製造委託、2修理委託、3情報成果物作成委託、4役務提供委託に大別されており、その適用対象となる取引は多岐に渡ります。 

2事業者の資本金については上記1の取引内容によって区分を定めています。

下請法には、親事業者が守るべき4つの義務と7つの禁止事項が定められています。 

4つの義務
1書面の交付義務
2支払い期日を定める義務
3書類の作成・保存義務
4遅延利息の支払い義務


11の禁止事項
1受領拒否の禁止
2下請代金支払い遅延の禁止 3下請代金減額の禁止
4返品の禁止
5買いたたきの禁止
6購入・利用強制の禁止
7報復措置の禁止 
8有償支給原材料費等の対価の早期決済の禁止 
9割引困難な手形の交付の禁止 
10不当な経済上の利益の提供要請の禁止 
11不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止
   
昨今の価格高騰化の影響を受けて、例えばこのような状況になっていませんか?
状況:価格高騰化における原材料費や人件費の明らかなコスト増があり、
下請事業者側から単価 の引き上げの要求があったにも関わらず、下請事業者と十分に協議することなく単価を据え置いた。
この場合は親事業者側が「買いたたき」の禁止事項に該当しているおそれがあります。
下請代金は下請事業者の事情を十分に考慮してもらい事前に協議の上定めることが必要です。 
このような状態にある場合は、親会社側に下請法上の問題を指摘してみましょう。

親事業者と下請業者の共存共栄が重要
このように、下請法は親事業者側に義務や禁止事項のある法律ですが、たとえ下請事業者側が了解を得ていても、
また親事業所に違法性の意識がなくとも、禁止事項に触れると親事業者側が違反の対象となることがあります。
口約束での取引や、長年の慣習での取引、契約書等の発行が無い取引などには十分注意が必要です。 
下請法上のトラブルを防ぐためには親事業者側に積極的に価格交渉の場に立ってもらうように働きかけたり、密に連絡を取り合うことが重要になります。
日々の業務に追われてそこまで手が回らない、や親会社に直接指摘しにくいなどの場合は公正取引委員会や、
最寄りの商工会議所及び商工会に設置されている相談窓口である「独占禁止法相談ネットワーク」でも相談が可能です。

被災者に対して自社製品等を提供した場合の法人税法上の取扱い

今年は、台風や地震など多くの災害が起きていますね。。。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

被災された方に自社の製品等を無償で提供する法人もあるかと思います。この場合の自社製品等の提供は、どのような会計処理になるでしょうか?

法人税基本通達9-4-6の4(自社製品等の被災者に対する提供)では、

法人が不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用の額は、寄附金の額に該当しないものとする。

とあります。したがって、不特定又は多数の被災者を救援するため緊急に行うものである場合には、寄附金や交際費には該当せず、広告宣伝費に準ずるものとして損金の額に算入されます。

この自社製品等は、自社で製造した製品に限らず、また自社の社名が入っていない物品や他から購入した物品であっても、その企業のイメージアップにつながるなど、実質的に広告宣伝の効果を生じるようであれば、広告宣伝費に準ずるものとして損金の額に算入して差し支えありません。

元従業員に未払残業代を支払った場合の源泉徴収税額

厚生労働省は、平成29年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ、公表しています。

公表している結果は以下の通りです。

(1) 是正企業数                             1,870企業(前年度比 521企業の増)
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、262企業(前年度比 78企業の増)
(2) 対象労働者数                         20万5,235人(同 107,257人の増)
(3) 支払われた割増賃金合計額        446億4,195万円(同 319億1,868万円の増)
(4) 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり2,387万円、労働者1人当たり22万円

結果を見ると増加傾向にあるのがうかがえます。昨今では、弁護士事務所に未払残業代の請求を依頼する労働者も増えており、「解決金」という名目で支給するケースもあります。

では、未払残業代の支給をする場合、源泉所得税の徴収はどのようになるのでしょうか?

未払残業代の支給方法として、当期に①「一時金(精算金等)」として支給する場合と②「過去分の給与」として支給する場合が考えられます。

 

まず、源泉所得税の取扱い。

一時金の場合・・・当期の賞与として源泉徴収

※「解決金」という名目出の支給であっても「賞与」として認識します。

過去分の給与とする場合・・・年末調整のやり直し

 

では、法人税法上はどうなるでしょうか?

法人税では、当期に損金算入(経費とする)します。これは、過去の労働に起因する残業代であっても債務が確定したときに損金に算入するという考え方があるためです。

 

次に、未払残業代を一括ではなく分割で支給する場合はどうなるでしょうか?

分割支給をする場合、例えば約1年間定期的に支給するのであれば賞与ではなく「給与」として源泉徴収していきます。定期ではなく不定期で例えば2回の分割支給の場合は「賞与」として源泉徴収していきます。

ところで、支給対象者が元従業員の場合、「扶養控除等申告書」は退職によってその効力はなくなっているため、「給与」「賞与」の源泉所得税を計算する際は「乙欄」を使用します。

「賞与」の源泉徴収税額の計算は、前月の給与がベースとなりますが、もうすでに退職している従業員の場合は、前月分の給与がない場合も考えられます。この場合は、下記のように計算します。

⓵(賞与の支給額ー社会保険料等)÷6※

②⓵の金額を給与所得の源泉徴収税額表(月額表)の「乙欄」に当てはめる。

③②で求めた税額×6=前月の給与がない場合の賞与の源泉徴収税額

※その賞与の計算の基礎となった期間が6か月を超える場合は12

 

源泉徴収税額の計算はともあれ、これからますます企業にとっては労務管理につてい厳しくなっていきますが、未払残業代の請求をされないようにきちんと給与計算を行うようにしましょう。

「健康保険被扶養者(異動)届」の添付書類が一部変わります。

平成30年10月1日以降、「健康保険被扶養者(異動)届」を日本年金機構に提出する場合の添付書類の取扱が変更になります。

厚生労働省が、日本国内に住む家族の方を被扶養者に認定する際の身分関係及び生計維持関係の確認について、申立てのみによる認定を行わず、証明書類に基づく認定を行うよう、事務の取扱いが示されたためです。

なお、一定の要件を満たした場合には、書類の添付を省略することができます。

扶養認定を受ける方が被保険者と同居しているときは下記表の項番1・2を、別居しているときは項番1・2・3を添付します。

項番 添付書類 目的 添付の省略ができる場合
次のいずれか

・戸籍謄本または戸籍抄本

・住民票※1

(提出日から90日以内に発行されたものに限る)

続柄の確認 次のいずれにも該当するとき

・被保険者と扶養認定を受ける方双方のマイナンバーが届書に記載されていること

・左記書類により、扶養認定を受ける方の続柄が届書の記載と相違ないことを確認した旨を事業主が届書に記載していること

年間収入が「130万円未満※2」であることを確認できる課税証明書等の書類 収入の確認 ・扶養認定を受ける方が、所得税法上の控除対象の配偶者または扶養親族であることを確認した旨を、事業主が届書に記載しているとき※3

・16歳未満のとき

仕送りの事実と仕送額が確認できる書類

・振込の場合・・・預金通帳等の写し

・送金の場合・・・現金書留の控え(写し)

・16歳未満のとき

・16歳以上の学生のとき

※1 被保険者と扶養認定を受ける方が同居していて、被保険者が世帯主である場合に限ります。

※2 扶養認定を受ける方が次のいずれかに該当する場合は「180万円未満」です。(収入には公的年金も含まれます)

・60歳以上の方

・障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者

※3 障害年金、遺族年金、傷病手当金、失業給付等非課税対象の収入がある場合には、受取金額の確認ができる通知書等のコピーの添付が必要です。

実務的には、マイナンバーを取得することが必須になっていく流れです。そして、扶養の認定も今よりも厳格になって行く流れですね。

 

平成30年分の年末調整:変更点について

あっという間に9月も終わりに差し掛かり、年末調整の時期が近づいてきました。控除証明書もちらほら届いている方もいらっしゃるかもしれません。

平成30年の年末調整では配偶者控除、配偶者特別控除の税制改正の影響で今までと変わった点があるので、解説していきます。

 

前年まで従業員さんに提出していただいてたのは、以下の二枚】

・翌年分の扶養控除等申告書

・当年分の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書

 

平成30年からは、1枚増えて3枚に】

・翌年分の扶養控除等申告書

・当年分の保険料控除申告書

・当年分の配偶者控除等申告書

 

今までの「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」が「保険料控除申告書」と「配偶者控除等申告書」の2枚に分かれたイメージです。

 

《保険料控除申告書》

内容的には変わっていなくて、前年までのものより欄がゆったりになりました。

 

《配偶者控除等申告書》

平成30年からは給与所得者本人の所得金額の区分によって配偶者控除、配偶者特別控除の額が変わるので、「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」で区分を判定してから、配偶者の所得金額でさらに控除額を判定していくことになります。実際、見慣れない書類で従業員さんが自分の所得金額を把握するのも難しいかもしれないので、「配偶者控除等申告書」の裏面の説明書きが印刷されたものを渡したり、記載例も一緒に渡してあげた方がよいでしょう。

「配偶者控除等申告書」は、平成30年からは「配偶者特別控除」を受ける給与所得者だけでなく「配偶者控除」を受ける給与所得者も提出が必要になるのでご注意ください。

 

生産性を向上させると助成金額が増えます(生産性要件)

わが国では、今後労働力人口の減少が見込まれる中で経済成長を図っていくためには、労働生産性を高めていくことが不可欠です。このため、国は事業所における生産性向上の取組みを支援するため、生産性を向上させた事業所が労働関係助成金(一部)を利用する場合、その助成額又は助成率の割増等を行っています。法人だけでなく個人事業主も対象となっています。

「生産性要件」って何?

助成金の支給申請書を労働局に提出する時点で、「直近の決算書」と「3年前の決算書」から計算した「付加価値」を各決算月の末日時点の「雇用保険の被保険者数」で割った数値を生産性といいます。

・生産性要件は、その3年度前に比べて生産性が6%以上伸びていること 

・「生産性」の伸びが1%以上6%未満の場合、金融機関から一定の「事業性評価」を得ること

(この場合は、借入金(なければ口座)のある金融機関から「与信取引等に関する情報提供に係る承諾書」に捺印をもらって労働局に提出する必要があります。)

※「付加価値」=営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃貸料+租税公課

人数がもともと少ない会社だと、3年前に比べて利益が出ていても雇用保険に加入要件のないパートさんなどの人数に左右されてしまうこともありますが、要件を満たした場合は、ちょっと面倒に感じるかもしれませんが助成金額の20%増額されるものもあり、メリットが大きいので検討する余地は大いにあります。

 

「生産性要件」の設定をしている助成金

  • (再就職支援関係)
    • 労働移動支援助成金
      早期雇入れ支援コース、中途採用拡大コース
  • (雇入れ関係)
    • 地域雇用開発助成金
      地域雇用開発コース
  • (起業支援関係)
    • 生涯現役起業支援助成金
  • (雇用環境の整備関係)
    • 人材確保等支援助成金
      雇用管理制度助成コース、介護福祉機器助成コース、介護・保育労働者雇用管理制度助成コース、人事評価改善等助成コース、設備改善等支援コース、雇用管理制度助成コース(建設分野)、若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)、作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
    • 65歳超雇用推進助成金
      高年齢者雇用環境整備支援コース、高年齢者無期雇用転換コース
    • キャリアアップ助成金
      正社員化コース、賃金規定等改定コース、健康診断制度コース、賃金規定等共通化コース、諸手当制度共通化コース、選択的適用拡大導入時処遇改善コース、短時間労働者労働時間延長コース
  • (仕事と家庭の両立支援関係)
    • 両立支援等助成金
      出生時両立支援コース、介護離職防止支援コース、育児休業等支援コース、再雇用者評価処遇コース、女性活躍加速化コース
  • (人材開発関係)
    • 人材開発支援助成金
      特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース、建設労働者認定訓練コース、建設労働者技能実習コース
  • (最低賃金引き上げ関係)
    • 業務改善助成金

対象にならない場合

1)開業してから期間が経っておらず、3年前の決算書がない場合

2)3年前の決算月の末日時点で雇用保険の被保険者がいない場合

3)3年前の決算期の初日から助成金の支給申請をする日までの間に会社都合による退職がある場合

 

「生産性要件」の計算式

生産性=付加価値/雇用保険被保険者数

再度「付加価値」について確認していきます。

「付加価値」=営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃貸料+租税公課

これら付加価値の対象となるものとして、通勤費などの諸手当があります。しかし、通勤費を旅費交通費に含めているような場合は対象になりません。あくまでも、どの勘定科目で処理していたかで判断されてしまします。勘定科目ありきなので、生産性要件の適用を考える場合は勘定科目をきちんと考えて会計処理すると有利になります。

長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果:約7割の事業場が法令違反

厚生労働省では、「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果(平成29年度)」を平成30年8月7日に公表しています。これは、平成29年度に、長時間労働が疑われる25,676事業場に対して実施された労働基準監督署による監督指導の結果を取りまとめたものです。

この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働数が1カ月当たり、80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としています。

平成29年度は、監督指導を実施した事業場のうち70.3%の事業場で労働基準法などの法令違反が認められました。平成28年度の66.0%よりも、その割合が増加しています。

 

【平成29年4月から平成30年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場:25,676事業場
このうち、18,061事業場(全体の70.3%)で労働基準関係法令違反あり。

(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
① 違法な時間外労働があったもの:11,592事業場(45.1%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:        8,592事業場(74.1%)
うち、月100時間を超えるもの:     5,960事業場(51.4%)
うち、月150時間を超えるもの:       1,355事業場(11.7%)
うち、月200時間を超えるもの:     264事業場( 2.3%)
② 賃金不払残業があったもの:1,868事業場(7.3%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:         1,102事業場(59.0%)
③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:2,773事業場(10.8%)

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
① 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,986事業場(81.7%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:      13,658事業場(65.1%)
② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,499事業場(17.5%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの:       1,878事業場(41.7%)

※ 脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があるため。

(厚生労働省ホームページより)

なお、この公表に当たって、監督指導事例も紹介されています。いくつかピックアップすると、

◎36協定を締結・届出することなく、全労働者の約3分の1に当たる労働者28名について、月100時間を超える違法な時間外・休日労働(最長:月224時間)を行わせていた。

◎法定の休憩時間を与えていなかった。

◎健康診断において異常の所見があった者に係る医師の意見聴取を行っていなかった。

◎常時50人以上の労働者を使用しているにもかかわらず、1年以内ごとに1回のストレスチェックを実施していなかった。

平成31年(2019年)4月から、働き方改革関連法による労働基準法や労働安全衛生法の改正も実施され、より一層の法令遵守が求められることになります。

ご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

外国人の社員(居住者)の配偶者控除・扶養控除について

昨今人手不足なこともあり、外国人の方を雇っているという会社も多くなっていると思います。そんな日本に住む外国人社員(居住者といいます。)が配偶者や子供などが日本に住んでおらず海外に住んでいる場合でも、日本の配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・障害者控除(以下、扶養控除等)は適用になるでしょうか?

海外に住んでいる方を非居住者といいますが、もっと厳密に定義を確認すると、『国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上の居所を有する個人以外の者』とされています。分かりにくい言い回しですが、まさに日本で働く外国人の方の親族で海外に暮らすことが日常となっている方が当てはまります。ちなみに日本人の方のお子様が1年以上の海外留学をしているような場合も当てはまってきます。

結論から先に言うと、このような非居住者でも、扶養控除等の適用を受けることができます。

では、その適用を受けるにあたって何か書類は必要になるでしょうか?

平成28年度の扶養控除等申告書から「非居住者である親族」という欄が増えました。

非居住者である親族がいる方が、所得税または住民税の扶養控除を適用する場合には、①「親族関係書類」と ②「送金関係書類」の二つを会社に提出する必要があります。

 

「親族関係書類」とは?

まず、「親族関係書類」とは、次の①又は②のいずれかの書類で、国外居住親族が居住者の親族であることを証するものをいいます。

① 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し(コピーでOK)

② 外国政府又は外国の地方公共団体(以下「外国政府等」といいます。)が発行した書類(原本の提出又は提示が必要)

(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)

例)戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書

外国政府等が発行した書類について、一つの書類に国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の全てが記載されていない場合には、複数の書類を組み合わせることにより氏名、生年月日及び住所又は居所を明らかにする必要があります。

また、16 歳未満の非居住者である扶養親族(扶養控除の対象とならない扶養親族)であっても障害者控除を受ける場合には、親族関係書類及び送金関係書類の提出又は提示が必要です。さらに、16歳未満の扶養親族を有する者で、個人住民税の非課税限度額制度(人的非課税制度)の適用を受ける者も含みます。

なお、親族関係書類は、扶養控除等申告書の提出時に会社に提示する必要があるため、その年の最初に給与が支給される日までには確認が必要となります。確認が出来なかった場合は、扶養のカウントはせずに給与計算を行うことになります。

「送金関係書類」とは?

次に「送金関係書類」は、仕送りしている事実を確認できる書類です。(コピーでOK)

なお、居住者が、国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払いを、その年に同一の国外居住の親族に3回以上行った場合の送金関係書類の提出又は提示については、その年の全ての送金関係書類の提出又は提示に代えて、次に掲げる①~⑤の事項を記載した明細書の提出及び各国外居住の親族のその年の最初と最後の支払いに係る送金関係書類の提出又は提示として差し支えないこととされています。(所得税基本通達120-9)

1居住者の氏名及び住所

2 支払を受けた国外居住親族の氏名

3 支払日

4 支払方法

5 支払額

 

「親族関係書類」、「送金関係書類」のいずれについても日本語への翻訳文が必要な点は注意が必要です。誰が翻訳するかの制限はありません。

自然災害(台風、地震など)による休業で休業手当の支払いは必要か?

今回の9月4日の台風では、想定外の甚大な被害となり、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。リフォーム会社の方は休日返上で対応に追われているとお聞きしています。1日も早く通常の生活に戻る日が来るようお祈り申し上げます。

 

今回の台風は前日からJRが運休するという情報もあり、前日から臨時休業にすると決めていた会社も多くあったかと思います。また、直近では北海道で起きた地震でも、停電の影響もあり臨時休業にした会社は多かったと思います。このような場合の休業日の給与の取扱いはどうなるでしょうか?

 

労働基準法第26条には、以下のように書かれています。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。(傍線筆者)

この条文では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合」とあります。「使用者の責めに帰すべき事由」は広範に定められており、例えば事業業績悪化に伴う生産調整のための休日や取引先の倒産による休日など直接事業者の責任ではないものも含まれます。

自然災害による休業の場合は、こういった使用者の責に帰すべき事由には当てはまらないため、休業手当の支払義務はないと考えられます。

 

では、さらに詳しく解説していきます。

 

前日から臨時休業を決めていた場合(全日休業)、給与の支払い義務はあるか?

自然災害により始業時刻前に全日休業とした場合は、使用者の責に帰すべき事由には該当せず、かつ、使用者の経営管理上の責任とも考えられないため、給与の支払い義務は生じないものと考えて結構です。

 

一部休業とした場合の給与の支払い義務は?

今回の9月4日の台風では、午前中だけ仕事という方もいらっしゃったかと思います。このように就業時間中に従業員を早退させる場合には一応使用者責任の範囲外とみなされます。ただし、単に雨が降っているから早退させるというのでは合理的な理由に欠けるため、暴風警報や大雨警報の発令など客観的な裏付けが必要なので慎重な判断が求められます。

このように1日のうちの一部を休業とした場合の取扱いについては、現実に就労した時間に対し支払われる賃金が平均賃金の100分の60に満たない場合には、その差額を支払う義務が生じます。

例えば、平均賃金が1万円の従業員の場合、休業手当は6,000円(10,000円×60%)となります。
1日のうち一部休業した場合、現実に就労した分の賃金が5,000円である場合は6,000円-5,000円=1,000円となり、休業手当として1,000円を支払うことになります。現実に就労した分の賃金が8,000円であった場合には、8,000円>6,000円となるため、休業手当を支払わなくてもよいことになります。

 

有給休暇との関係は?

有給休暇は労働の義務があることを前提としているため、台風のために「休日」とされていた場合はそもそも労働の義務はなく、従業員は有給休暇を取得できないと考えられます。したがって、従業員が事後的に有給休暇にしてほしいと言ってきたとしても、それを認める義務は会社側にはありません。

台風で臨時休業になった日と事前に申請していた有給休暇の日が被った場合は、予知して申請されたわけではないので会社は有給休暇を認めなくてはいけません。

また、就業規則で、自然災害の際の特別休暇について定めていた場合は、それに従うことになります。会社側が恩恵的に有給休暇としてあげる分には全く問題はありません。